屈遵

屈遵（くつ じゅん）は、生没年不詳ながら、中国の五胡十六国時代から南北朝時代にかけての激動期に、西燕、後燕、そして北魏という異なる王朝に仕えた政治家です。字は子皮、本貫は昌黎郡徒河県にありました。

西燕時代、屈遵は慕容永に仕え、尚書僕射という要職を担い、武垣公に封じられました。尚書僕射は、政府の中枢で政策立案や実行を担う重要な役職であり、彼の政治手腕が慕容永に高く評価されていたことが伺えます。しかし、西燕は短命に終わり、慕容永が滅亡すると、屈遵は新たな道を模索することになります。

次に彼が仕えたのは、後燕の慕容垂でした。ここでは博陵県令という地方官に任命され、地域行政に携わりました。博陵県令は、県民の生活を支え、治安を維持する重要な役割であり、屈遵はここでもその能力を発揮したと考えられます。

彼の人生における大きな転換期は、北魏の道武帝による南征の際に訪れます。道武帝が魯口にまで進軍してきた際、多くの官僚や太守が逃亡する中、屈遵は官吏や民衆を説得し、道武帝に帰順するという決断を下しました。この行動は、彼の先見の明と政治的洞察力を示すものであり、北魏の道武帝から高く評価されることになります。

道武帝に礼遇された屈遵は、中書令という重要な役職に任じられ、総文誥を兼ねることになりました。中書令は、皇帝の側近として機密事項を扱い、詔勅の起草などを行う重要な役割です。総文誥は、国の重要な文書作成を統括する役職であり、彼の文才と政治能力が重用されたことを示しています。中原が平定されると、屈遵は下蔡子の爵位を受けました。

道武帝に従って平城に帰還した後、まもなく70歳で亡くなりました。彼の死後、その功績は忘れられることなく、後世に伝えられています。

屈遵には二人の息子がいました。長男の屈須は後を継ぎ、長楽郡太守、鎮遠将軍、信都侯を歴任し、屈垣という息子がいました。屈須の死後、次男の屈処珍が爵位を継ぎました。

屈遵の人物像や事績については、『魏書』巻33 列伝第21と『北史』巻27 列伝第15に詳しい記述が残されています。これらの史書を通じて、彼の生涯と功績を知ることができます。

屈遵は、激動の時代を生き抜き、複数の王朝に仕えながらも、常にその能力を発揮し、重要な役割を果たした政治家でした。彼の柔軟な思考、卓越した政治手腕、そして民衆を思う心が、彼の人生を特別なものにしたと言えるでしょう。

もう一度検索