層序学

層序学とは

層序学（そうじょがく）は、地質学における重要な分野の一つで、地層が形成された順序、すなわち新旧関係を研究する学問です。層位学（そういがく）とも呼ばれます。地層は、通常、下から順に新しいものへと積み重なっていくという「地層累重の法則」に従います。しかし、実際には、地層は長い年月を経て、植物に覆われたり、変形したり、断片化したり、一部が失われたりすることがあります。そのため、地層の全体像を把握することは容易ではありません。

層序学は、このような断片的な情報をもとに、元の地層の重なりを復元することを目的としています。この復元された地層の重なりや、地層の新旧関係そのものを層序と呼びます。

層序学の手法

層序を復元するためには、主に地質調査と地質図学（幾何学）の手法が用いられます。地層の岩相（岩石の種類や特徴）、堆積構造（地層がどのように積み重なっているか）、含まれる化石などを観察し、地層の同定や新旧関係を判断します。もし、これらの情報だけでは判断できない場合は、示準化石や放射年代測定を用いて地層の時代を特定し、新旧関係を明らかにします。この地層同定の法則は、18世紀末にウィリアム・スミスによって初めて用いられ、確立されました。

層序学は、近代地質学において最初に確立された分野であり、地質学の多くの分野の基礎となっています。例えば、生物の進化を研究する際には、化石の層序的な位置関係や放射年代を根拠に、化石の新旧関係を判定する必要があります。また、断層の活動履歴を調べる際にも、元の地層の重なりが分からなければ、断層がいつ、どのように動いたのかを明らかにすることはできません。

考古学研究における層序学

考古学研究においても、層序学（層位学）は重要な役割を果たします。考古学では、地層ではなく「土層」という用語が一般的に使われますが、土層が含む遺物や遺構の時間的な新旧関係を明らかにするために層序学の知識が活用されます。

日本では、1905年にニール・ゴードン・マンローが横浜市三ツ沢貝塚を発掘した際、地層の区分が異なる時代に堆積した証拠であると指摘し、遺物や土器を各層ごとに区別する必要性を主張しました。これは、日本における層序学の理解と、それに基づいた分層発掘の最初の事例となりました。

まとめ

層序学は、地質学だけでなく、考古学を含む様々な分野で重要な役割を担っています。地層や土層を注意深く観察し、その形成順序を解明することで、地球の歴史や生物の進化、そして人類の歴史をより深く理解することが可能になります。

参考文献

サイモン・ウィンチェスター 著、野中邦子 訳『世界を変えた地図 : ウィリアム・スミスと地質学の誕生』早川書房、2004年。ISBN 4-15-208579-7。
文化庁「第Ⅳ章：土層の認識と表土・包含層の発掘・第１節：遺跡における土層の認識」『発掘調査のてびき-集落遺跡発掘編-』同成社、2010年5月、94頁。ISBN 9784886215253。
天野一男・秋山雅彦『フィールドジオロジー入門』共立出版〈フィールドジオロジー 1〉、2004年。ISBN 978-4-320-04681-8。
平朝彦『地層の解読』岩波書店〈地質学 2〉、2004年。ISBN 4-00-006241-7。

関連項目

地球科学
地質学
地質年代
地層
火山灰
花粉
堆積学

外部リンク

考古学と地質学間に生じた層序認識の違いとその原因 : 地質学研究者の視点から (1)鬼頭剛 (愛知県埋蔵文化財センター, 2004-03) 掲載雑誌名:愛知県埋蔵文化財センター研究紀要. (5)

もう一度検索