層雲 (雑誌)

層雲（そううん）

「層雲」は、1911年（明治44年）4月に俳人・荻原井泉水が創刊した自由律俳句の専門誌です。新傾向俳句運動の拠点として、俳句の世界に大きな足跡を残しました。創刊当初は、河東碧梧桐を擁し、大須賀乙字らも参加していました。井泉水は創刊号から「俳壇最近の傾向を論ず」を連載し、新傾向俳句を擁護しました。

季題揚棄と無季俳句の提唱

1913年1月号から連載を開始した「昇る日を待つ間」で、井泉水は俳句を「光の印象」と「力の印象」を「緊張した言葉と強いリズム」でとらえる「印象の詩」であると主張し、季題を捨てることを提唱しました。この主張は、伝統的な俳句の形式にとらわれない自由な表現を求めるもので、大きな反響を呼びました。しかし、季題を重視する碧梧桐は、この主張に反発し、1915年3月に「海紅」を創刊し、層雲を去りました。

自由律俳句の代表的雑誌として

碧梧桐の離脱後、「層雲」は自由律俳句の代表的な雑誌として、野村朱鱗洞、尾崎放哉、種田山頭火、栗林一石路、橋本夢道、松尾あつゆきなど、多くの優れた俳人を輩出しました。彼らの作品は、従来の俳句の枠にとらわれない、自由で個性的な表現を特徴としています。

戦中と復刊、そして独立

「層雲」は、戦中の1944年に「俳句日本」に統合されましたが、1946年6月に復刊を果たしました。井泉水が1976年に亡くなった後は、伊藤完吾が編集を引き継ぎましたが、2001年に北田傀子が離脱し、2002年に「草原」を立ち上げました。また、伊藤も2002年に「層雲自由律」（当初は「層雲通信」）を発行し独立。2014年には放哉研究家の小山貴子が「青穂」を創刊し独立しました。これらの動きは、「層雲」が俳句界に与えた影響の大きさを物語っています。

「層雲」は、自由律俳句の発展に大きく貢献しただけでなく、現代の俳句にもその影響は色濃く残っています。その革新的な精神は、今もなお多くの俳人に受け継がれています。

関連文献

上田都史 『自由律俳句文学史』 永田書房、1975年
永田竜太郎 『自由律俳句作品史』 永田書房、1979年
小山貴子 『自由律俳句誌「層雲」百年に関する史的研究』 私家版、2013年

外部リンク

荻原井泉水著『層雲第一・第二句集　自然の扉・生命の木』（層雲の井泉水選句による合同句集、井泉水門下による無料公開作品）

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