山下十治郎

山下十治郎（やました じゅうじろう、1884年 - 1945年4月16日）は、日本の料理人であり、北海道苫小牧市における洋食文化の先駆者として知られています。

生い立ちと修行

1884年（明治17年）に山梨県東山梨郡平等村（現在の山梨市）で、伊藤金治郎の子として生まれました。その後、山梨県の山下家と養子縁組をしています。料理人としてのキャリアは、横浜グランドホテルでのフランス料理の修行から始まりました。横浜在住中には長男の誠一を授かっています。

北海道での活躍

明治後期の具体的な時期は不明ですが、札幌市に移住し、豊平館に勤務するようになりました。1910年には、札幌で長女のすみ子が誕生。同年には王子製紙苫小牧工場の落成パーティーの料理担当として、迎賓館として先行開館していた「王子倶楽部」（苫小牧）に派遣されます。1911年には、皇太子（後の大正天皇）が北海道を行啓した際、宿泊先の豊平館で調理を担当し、その後も北海道巡幸に同行しました。同年、「王子倶楽部」の初代料理長に就任し、約8年間、東京から王子製紙苫小牧工場を訪れる客や工場幹部の料理を担当しました。この間、1912年に次男の正、1916年には三男の文雄が誕生しています。

第一洋食店の開業とその後

1918年に王子製紙を退職。翌1919年8月10日、苫小牧で初めての洋食店となる「第一洋食店」を開業しました。1945年4月16日に亡くなった後、「第一洋食店」は次男の正が継ぎました。

料理と評価

山下は、ハヤシライスやビーフシチューなどの洋食を苫小牧に初めて紹介しました。特に、2週間以上かけて赤ワインで煮込むデミグラスソースを使ったビーフシチューは、「第一洋食店」の代表的なメニューとして知られています。また、ジャガイモを使わないクロケットも提供していましたが、当時のお客には受け入れられず、メニューから除外されていました。しかし、3代目の山下明（正の息子）によって、その味が復活しています。王子製紙の社長であった藤原銀次郎は、山下が「第一洋食店」を開業するにあたり、「十治郎の料理は北海道一美味である」と称賛し、「北海第一楼」という店名を提案しました。しかし、洋食店にはそぐわないと判断した山下は、藤原の了解を得て「第一洋食店」と名付けました。

山下十治郎は、苫小牧における洋食文化の普及に大きく貢献した人物として、その名が語り継がれています。

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