山内一唯

山内一唯について

山内一唯（やまうち かつただ）は、江戸時代初期の武将であり、旗本として活躍しました。彼は武蔵国指扇山内家（新橋山内家）の初代当主としても知られています。その生涯は、戦乱の時代から泰平の世へと移り変わる中で、武士としての生き様を色濃く残しています。

生い立ちと武功

慶長5年（1600年）、一唯は遠江国掛川（現在の静岡県掛川市）で、山内康豊の四男として生を受けました。父・康豊は、土佐藩主として有名な山内一豊の弟にあたります。一唯は、大坂の陣で武功を挙げ、その功績が認められ、元和9年（1623年）に武蔵国指扇（現在の埼玉県さいたま市西区周辺）に3千石の領地を与えられ、幕府旗本となりました。この時、本家とは別に山内家を興し、指扇山内家の初代当主となったのです。

指扇での領地経営

一唯は、領内の中釘村に陣屋（中釘陣屋、指扇陣屋とも呼ばれる）を築き、領地経営に励みました。また、書院番としても幕府に仕え、後に酒井忠行の組に加わりました。領内では、実母である妙玖院の菩提寺として果成寺を妙玖寺と改称し、手厚く保護しました。現在も妙玖寺には、一唯をはじめ、一輝、栄松院、法養院（栄松院の母）の墓が残されています。

波乱の私生活

一唯の私生活は、波乱に満ちていました。60歳の時、家臣である高村権之丞の妻・妙陽（当時19歳）に惚れ込み、彼女を側室としたのです。この時、妙陽は2児の母であり、親子夫婦の縁を切らせた上で側室にしたという逸話は、当時としても非常に衝撃的な出来事でした。しかし、権之丞父子は、その後も家老として一唯に仕え、荒川の堤防の構築や新田開発に尽力しました。一唯の死後も、妙陽は元夫とは復縁せず、主従関係を貫いたとされています。

家系の変遷

一唯の死後、旗本山内家は嫡男の一輝が相続しましたが、翌年に一輝が26歳で病没したため、弟の一俊が家督を継ぎました。しかし、一俊も27歳で早逝したため、一俊の長男である豊房がわずか4歳で家督を相続することになりました。その後、山内本家である土佐藩の藩主、山内豊昌に嗣子がなかったため、元禄元年（1688年）に豊房が本家の養子となり、元禄13年（1700年）に土佐藩主となりました。豊房が養子となった際、指扇領は幕府に返上されたため、指扇領山内家（新橋山内家）は断絶しました。その後、豊房も子を残さず35歳で没し、弟の豊隆が藩主となりました。指扇は所領ではなくなりましたが、妙玖寺は土佐藩山内家からの保護を受け続けました。

まとめ

山内一唯は、戦国時代の武将の血を受け継ぎながらも、江戸時代の旗本としてその生涯を全うしました。武功を立て、領地を経営する一方で、家臣の妻を側室にするなど、その生き方は型破りでした。しかし、その行動の背景には、武士としての強い信念と、一族を守り抜くという覚悟があったのかもしれません。彼の足跡は、現代においても多くの人々に語り継がれています。

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