山内直通

山内直通

山内直通（やまのうち なおみち）は、戦国時代の武将であり、備後国（現在の広島県東部）の甲山城主としてその名を知られています。彼は、出雲国の尼子氏、周防国の大内氏、そして安芸国の毛利氏という、強大な勢力に囲まれながらも、巧みな外交戦略と軍事力によって独立を維持しました。

生涯

備後山内氏は、備後の国人領主の一家でした。直通は山内豊成の子として生まれ、文明15年（1483年）に父から11か所の所領を本領地として譲り受けました。さらに、下村栖真院領や三ヶ村同院領など4か所を請地として譲られています。また、同年には山内家に伝わる判物や譲状など15通も譲られ、家督を継承しました。同年12月には、備後国守護の山名政豊から、備後国と播磨国の所領を安堵されています。その後も山名氏との間で書状のやり取りを行っていましたが、次第に山名氏の勢力は衰退し、大永年間には大内氏が台頭してきます。

大永7年（1527年）には、和智豊広が大内義興に背いたため、直通も大内氏の和智氏討伐に参陣しました。直通の調略が功を奏し、同年9月には和智氏は再び大内氏に帰属することとなります。天文元年（1532年）には、尼子経久とその三男である塩冶興久が所領を巡って争い、敗れた興久は義兄である直通を頼って甲山城に落ち延びました。直通は興久を匿いますが、これに対し尼子経久は天文3年（1534年）に家臣の黒正甚兵衛を派遣し、興久の引き渡しを要求しました。直通は興久に対する義理と情誼から要求に応じることができませんでしたが、それを悟った興久は自害しました。直通は興久の首を尼子氏に引き渡し和睦しましたが、この一件以降、山内氏と尼子氏の関係は一層悪化することとなりました。

山内氏と尼子氏の関係が悪化したことを察知した毛利元就は、家臣の志道刑部大輔（後の口羽通良）を直通に接近させ、親睦を深めました。志道刑部大輔は直通に偏諱を懇願し、「通」の字を与えられ「通良」と名乗るようになります。また、毛利氏の家督争いで相合元綱を擁立しようとして誅殺された渡辺勝の遺児・渡辺通が、母と共に直通の家臣に保護され、直通の下で元服しました。渡辺通は武勇に優れていたため直通に気に入られ、諱の「通」も直通からの偏諱でした。山内氏と毛利氏の関係が深まるにつれ、直通は渡辺通が毛利氏に復帰し、家名を再興できるよう元就に依頼しました。元就は当初、渡辺氏の再興に乗り気ではありませんでしたが、山内氏を味方につけるために、渡辺通の毛利氏復帰と渡辺氏再興を認めました。そして天文4年（1535年）には、山内氏と毛利氏の間で講和が成立しました。直通の子である豊通には毛利興元の娘が嫁いでおり、一時的に豊通が山内氏の当主として活動していた時期もありましたが、豊通が父に先立って亡くなったため、その後は再び直通が当主として活動しました。

山内氏と毛利氏の講和を脅威と見た尼子経久と詮久（後の晴久）は、天文5年（1536年）春に備後に侵攻し、山内氏の甲山城を攻略しました。当初、詮久は山内家を断絶させるつもりでしたが、直通の外孫である隆通に山内家の家督を相続させ、直通を隠居に追い込みました。

その後、天文22年（1553年）に直通は亡くなりました。

山内直通は、戦国時代の激しい勢力争いの中で、領地と家を守り抜いた武将として、その名を歴史に刻んでいます。

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