判物

判物（はんもつ）とは

判物とは、室町時代から江戸時代にかけて武家社会で用いられた文書の一種です。特に、上位の立場にある者、具体的には征夷大将軍や大名（守護大名、戦国大名、藩主）などが発給した文書のうち、差出人の花押（かおう、サインのようなもの）が付されたものを指します。これに対し、印判（はんこ）が押された文書は印判状（朱印状や黒印状など）と呼ばれ、判物とは区別されます。

判物の歴史

判物は、特に公的な性質が強く、家臣への所領の給付やその権利の安堵、武功に対する感状など、主従関係において重要かつ永続性が求められる文書に用いられました。

その起源は鎌倉時代に遡ります。当初は直状（差出人が直接書いた書状）に下知状（命令を伝える文書）の要素を加えた書下状という形式が用いられていました。室町時代になると、守護大名が征夷大将軍の御内書（将軍が発給する文書）に倣い、判物を発給するようになりました。戦国時代には、印判状と判物の区別が明確になり、判物は戦国大名の命令文書の中で最も格式が高いものとされました。

征夷大将軍が発給する判物は、特に御判書（ごはんしょ）と呼ばれました。江戸幕府においては、10万石以上の大名家の異動（新規での加増や当主の交代）の際に用いられ、朱印状が用いられる10万石未満の大名との間には、格式の差が明確に示されました。また、大名家内部でも、家老のような重臣には判物が、それ以下の武士には印判状が発給されるなど、差出対象にも格差が存在しました。

判物の特徴と重要性

判物は、その発給者と内容の重要性から、武家社会において非常に重視されました。花押が記されていることで、文書の正当性と発給者の意思が明確に示され、その内容の信頼性が高められました。また、判物は、単なる命令伝達だけでなく、主従関係の確認や、家臣への恩賞、領地の保証など、武家社会における様々な権利や義務を定める重要な役割を果たしていました。

判物は、現代においては、当時の社会構造や武家社会の制度、文書行政を知る上で貴重な資料となっています。

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