山口城

山口城：幕末に築かれた長州藩の政庁

山口城は、現在の山口県山口市滝町に位置し、かつて「山口屋形」や「山口政庁」とも呼ばれた、長州藩（毛利氏）の居城でした。高嶺城跡に築かれ、幕末の動乱期における重要な拠点として機能しました。

歴史的背景

慶長5年（1600年）以降、毛利氏は萩城を拠点としていましたが、幕末の有事に備え、瀬戸内海方面への指揮の便を図るため、山口に新たな拠点を築くこととなりました。関ヶ原の戦いの後、毛利氏が新たな居城の候補地として山口を挙げたものの、江戸幕府は萩への築城を指示したという経緯があります。しかし、外国艦隊への対応を考慮した山口移鎮が行われ、山口城の築城は毛利氏の長年の悲願でもありました。

城郭の特徴

山口城は天守を持たない平城でしたが、詰城として高嶺城を活用していました。現存する絵図によれば、大砲を備えた西洋式城郭、特に八角形の稜堡式城郭の様式を取り入れていたとされています。周囲には水堀と腰巻型の石垣が築かれ、萩城御殿を解体・移築した御殿が建てられました。この御殿には、萩城のものだけでなく、禁門の変後に没収された江戸桜田藩邸の部材も用いられており、幕府には「屋形の移設」として申請されました。居館としての性質が強いものの、広義の城郭としては毛利氏が築いた最後の城となります。

幕末の動乱と山口城

文久2年（1862年）に本拠地を萩から山口へ移すことが決定され、元治元年（1864年）には新たな藩主居館が完成し、毛利敬親が移住しました。しかし、第一次長州征討の際、幕府からの撤兵条件として山口城の破却が提示され、一部が破却されました。その後、慶応元年（1865年）に再び山口へ移住し、第二次長州征討では政治・軍事の拠点として重要な役割を果たしました。

明治以降の変遷

大政奉還後の明治3年（1870年）には政事堂から藩庁へと改称され、廃藩置県後の明治4年（1871年）には城内に山口県庁が置かれました。明治6年（1873年）の廃城令により、一時陸軍省の所管となりましたが、その後大蔵省の所管となり廃城となりました。

現在の遺構

現在、山口城には水堀の一部と薬医門（旧山口藩庁門）が現存しています。この表門は、廃藩置県後は県庁正門となり、その後県庁の西門となりました。1987年（昭和62年）には「旧山口藩庁門」として山口県指定有形文化財に指定され、現在の山口県庁舎の中央門と正門の間に保存されています。また、城跡に建てられた旧山口県庁舎と旧山口県議会議堂は、現在は山口県政資料館として利用されています。

まとめ

山口城は、幕末の長州藩における政治・軍事の要であり、西洋式城郭の要素を取り入れた独特の構造を持っていました。現在は一部の遺構が残るのみですが、その歴史的価値は高く評価されています。山口県を訪れる際には、ぜひこの地を訪れ、幕末の歴史に触れてみてください。

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