山名城

山名城は、現在の群馬県高崎市山名町前城に位置する、戦国時代の日本の城（山城）です。別名前城、または寺尾下城とも呼ばれていました。天正18年（1590年）まで、地元の豪族であった木部氏の重要な拠点として機能していたと考えられています。

概要

山名城は、烏川と鏑川に挟まれた片岡丘陵の東南端に位置しています。東西に連なる尾根の一部を堀切で区画し、城郭として利用していました。南北約130メートル、東西約450メートルに広がる比較的大きな城です。西側の尾根続きには、根小屋城が北東約700メートルの場所に存在し、互いに連携していました。

築城は応永4年（1397年）に遡り、当時は尹良親王が拠点としていた寺尾城（寺尾中城）の東南の防御を固めるために築かれました。別名である寺尾下城は、この寺尾中城や寺尾上城（乗附城）との位置関係を示しています。後に、武田信玄が北西に根小屋城を築城したことで、山名城はその支城としての役割を担うようになりました。もう一つの別名である前城は、根小屋城の前面に位置することに由来します。戦国時代に大規模な改修が行われたため、現在見られる遺構は主にその時代のものです。

戦国時代には、この地域を治めた領主として、元亀2年（1571年）4月に武田信玄から山名の替地として下大塚・秩父に百貫文を与えられた小林氏や、元亀3年（1572年）に信玄から山名の百貫文を浦野民部左衛門に替わり与えられた木部越前守などが確認できます。

この地域は、山名氏発祥の地である多胡郡山名郷に比定されており、山名城も山名義範によって築かれ、山名氏代々の居城であったという伝承があります。しかし、これを裏付ける確かな証拠はなく、詳細については不明な点が多いのが現状です。

戦国時代を通じて、山名城は東に位置する木部氏館（現在の群馬県高崎市木部町の心洞寺）に拠点を置いていた土豪、木部氏の重要な要害として機能しました。木部氏は、武田氏、滝川氏、後北条氏と主家を次々と変えながら生き残っていましたが、天正18年（1590年）に豊臣秀吉が後北条氏直を攻撃した際に北条氏側についたため、滅亡しました。これにより、山名城もその消息を絶ち、廃城になったと考えられています。

現在、本丸は公園として整備されており、訪れる人々が歴史に触れることができる場所となっています。また、城の南側中腹には、山ノ上古墳と山ノ上碑が現存しており、古代からの歴史を感じさせるスポットとなっています。

構造

本郭は、東西55メートル、南北35メートルの規模を持ち、周囲には空堀と腰郭が設けられています。その東側には、東西55メートル、南北40メートルの第二郭があり、さらにその東には第三郭が続いています。本郭の西側には、堀切によって区切られた5つの郭が並んでいます。城全体としては、東西450メートル、南北180メートルの広がりを持っていました。天正年間に見られる囲郭式の城郭構造や、鉄砲の使用を考慮した堀切の存在は、戦国時代に大規模な改修が行われたことを示唆しています。

脚注

高崎市指定史跡

関連項目

日本の城一覧

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