山国隊

山国隊：戊辰戦争における農兵隊の軌跡

京都市右京区に位置する山国郷で結成された山国隊は、幕末期に活躍した農兵隊です。平安京造営時の木材供給地として知られ、古くから皇室との深い繋がりを持つ山国郷。しかし、幕末期には複雑な所領関係が地域社会の課題となっていました。名主たちは、かつての山国庄の時代のように、天皇からの正式な官位授与による地域の一体化を目指し、地域結束の強化を図っていました。

結成と鳥取藩への所属

慶応4年（1868年）1月、鳥羽・伏見の戦いが勃発。西園寺公望からの丹波での王政復古の募兵に応え、山国郷では皇室との繋がりと郷中復古（禁裏御料回復）の願いから、自弁による農兵隊が結成されました。隊は「西軍」と「東軍」の2軍に編成され、山国神社に集結後、出陣しました。

西軍は山陰道での西園寺との合流を目指しましたが、その方面が既に平定されていたため、鳥取藩の伊王野治郎左衛門の仲介を経て、岩倉具視から鳥取藩に属し「山国隊」と称することが指示され、正式に山国隊が誕生しました。東軍は大坂の征討大将軍仁和寺宮の陣への合流を目指しましたが、実現せず、御所警備にあたることとなりました。

京都出陣と東征

有栖川宮熾仁親王の京都出陣に伴い、山国隊1小隊が東征の指令を受けました。慶応4年2月13日、隊士28名と客士2名からなる小隊は、鳥取藩部隊に加わり「十三番隊」として京都を出発しました。鳥取藩士河田左久馬が隊長、原六郎らが司令士として指揮を執り、勝沼の戦い、安塚の戦い、上野戦争などに参加しました。激戦の中で戦死傷者も出ましたが、隊は奥州へと進軍し、その後、京都に凱旋しました。

凱旋とその後

明治2年2月18日、山国隊は京都から山国へ凱旋。多くの見物人や出迎えの中で、山国神社を参拝しました。戦死3名、病死3名、行方不明1名という犠牲を払った山国隊の活動は、郷土の誇りとして現在も語り継がれています。軍費自弁による多大な借金は、名主仲間共有の山林を売却することで返済されましたが、宮座は維新後間もなく消滅しました。現在でも、山国神社の還幸祭や京都時代祭では山国隊姿の行進が見られます。

山国隊と鳥取藩の関係

山国隊と鳥取藩の関係は、水口市之進（水口備前守）の実弟である水口正顕が鳥取藩京都上屋敷の呉服所役人若代長左衛門の養子となり、若代四郎佐衛門として京都で活動していたことがきっかけでした。若代四郎佐衛門の尽力により、水口市之進らは慶応3年12月10日、従五位下の官位を得ています。この関係を通して、山国隊は鳥取藩に属することになったのです。

エピソード

山国隊の隊員たちは、出陣前に北野天満宮近くで特訓を行い、武運長久を祈願していました。また、山国隊の指揮を執った鳥取藩士河田左久馬は、維新後京都府政に関わっています。さらに、山国隊には軍楽隊も編制されており、現在も「山国隊軍楽保存会」がその伝統を受け継いでいます。

山国隊は、その短期間の活動にもかかわらず、戊辰戦争における重要な役割を果たした農兵隊でした。彼らの勇気と献身は、今もなお人々の記憶に刻まれ、郷土の誇りとなっています。

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