山城丸

日本郵船の「山城丸」三代記

「山城丸」は、日本郵船が所有した複数の船舶に与えられた名前です。ここでは、初代から三代目までの「山城丸」の生涯を紐解きます。

初代「山城丸」（1884年竣工）

初代「山城丸」は、共同運輸会社がイギリスのアームストロング・ミッチェル社に発注した2,473トンの船舶でした。共同運輸は、有事の際に軍艦の代用となる優秀船を揃える方針で、「山城丸」もその一つとして建造されました。当初は「武蔵丸」「大和丸」と命名される予定でしたが、海軍省の指導により「山城丸」に変更されました。1884年7月9日に横浜港に到着。

1885年からは、ハワイ官約移民の輸送に12回従事しました。最初に「山城丸」が行ったのは第2回で、989人の移民を乗せて1885年6月4日に長浦を出港し、6月17日にホノルルに到着しました。これは日本船による初の移民輸送でした。

1894年の日清戦争では、陸軍と海軍に徴用され、巡洋艦代用として用いられました。水雷艇の母艦任務が主な役割でした。

戦後は、横浜-メルボルン航路に就航し、1904年からの日露戦争でも再び軍用船として徴用されました。晩年は神戸-大連航路に就航し、1910年に売却、大阪でスクラップとなりました。

2代目「山城丸」（1914年竣工）

2代目「山城丸」は、4,555トンの船舶で、川崎造船所で建造されました。同時期に建造された「近江丸」とは姉妹船の関係にありました。

第一次世界大戦後、長崎を発着する新たな上海航路の開設に伴い、「山城丸」は南洋諸島方面への航路に投入されました。南洋航路は、島々の生活や開発に不可欠な役割を果たしました。

太平洋戦争勃発後は、船舶運営会に移管され、不定期船として運航されました。1943年9月16日に横浜を出港し、父島経由でサイパンへ向かう途中、9月23日にアメリカ海軍潜水艦「トラウト」の攻撃を受けました。魚雷が命中し、船体は分断され沈没しました。乗員乗客は、一部の犠牲者を除き、護衛艦に救助されました。

3代目「山城丸」（1963年竣工）

3代目「山城丸」は、10,467総トンのY型高速貨物船でした。1960年代に計画・建造された高速貨物船4隻のうちの1隻で、球状船首（バルバス・バウ）の採用により、高い速力を実現しました。

日本・ヨーロッパ間の航路に就航しましたが、1973年の第四次中東戦争に巻き込まれます。シリアのラタキア港に停泊中、イスラエル海軍のミサイル攻撃を受け炎上、放棄されました。乗組員は無事帰国しましたが、船の復旧は断念されました。

その後、ギリシャの海運会社に売却され「Kyra」と改名、復旧作業を経て貨物船として運航されました。1983年にはパナマの会社に売却され「Michele」と改名されましたが、同年中に解体のためインドへ売却され、スクラップとなりました。

「山城丸」の名を持つ3隻の船は、それぞれの時代背景の中で、日本の海運を支え、激動の時代を航海しました。

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