山形英学校

山形英学校（やまがたえいがっこう）

山形英学校は、明治時代前期の山形において設立された、山形県で最初に誕生したミッションスクールです。キリスト教の精神に基づいた教育を施し、当時の山形における近代教育の一端を担いました。

沿革

学校の始まりは1887年（明治20年）に遡ります。仙台神学校（現在の東北学院の前身にあたる）の創設者である押川方義によって、当時の山形県南村山郡山形（現在の山形市旅篭町に位置する地域）に設立されました。同年11月21日には盛大な始業式が執り行われ、正式に開校しました。

教育内容

教育課程は、予科2年間、本科4年間の合計6年制で構成されていました。授業は多くの学科で英語を使用して行われるという先進的な特徴を持ち、生徒たちは高度な語学力と専門知識の習得を目指しました。さらに、当時の知識層に求められていた和漢文学に加え、国際的な視野を広げるためのドイツ語もカリキュラムに取り入れられていました。これらの教育内容は、明治という新しい時代に対応したものでした。

運営体制

学校の運営は、当時県会議員を務めていた坂東東一郎が校主として責任を担いました。教育指導面では、設立者でもある押川方義が校長を兼任し、松村介石が教頭を務める体制でした。英語教育の核となったのは、合衆国およびドイツ改革派教会から派遣された経験豊かな宣教師たち、すなわちJ・P・ムーアとD・B・シュネーダーでした。彼らにより、質の高い英語教育が提供されました。また、布教活動においては、日本基督一致教会山形講義所（後の山形六日町教会）と密接に連携し、教育と伝道を一体的に進めました。

経営の変遷と廃校

しかし、学校運営は順風満帆ではありませんでした。開校からわずか2年後の1889年（明治22年）、校長であった押川方義がアメリカへ渡航することになり、運営体制に変更が生じます。これに伴い、校主であった坂東東一郎が県会議員を辞任し、新たに校長に就任しました。このような主要人物の交代や、おそらくは財政的な問題などが重なり、学校経営は次第に困難に直面するようになります。そして、残念ながら経営を立て直すことはできず、1891年（明治24年）、開校からわずか4年という短い期間で山形英学校はその歴史に幕を下ろし、廃校となりました。

主な関係者

学校の短い歴史の中で、後に著名な思想家・史家となる酒井勝軍が一時在籍していましたが、彼は学業を途中で終えています。

設立者・校長: 押川方義
校主・校長: 坂東東一郎
教頭: 松村介石
英語教師: J・P・ムーア、D・B・シュネーダー
主な出身者: 酒井勝軍（中退）

山形英学校の存在は、明治期の山形県におけるミッションスクールの歴史や、当時の先進的な教育の試みを知る上で貴重な事例です。短命に終わった学校ではありましたが、その教育理念や体制は、当時の地域社会に一定の影響を与えたと考えられます。

参考文献

関根正雄『内村鑑三』清水書院
『日本キリスト教歴史大事典』教文館、1988年
* 高橋昌郎『明治のキリスト教』吉川弘文館、2003年

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