山本圭吾 (芸術家)

山本圭吾：メディアアートの先駆者

山本圭吾（やまもと けいご、1936年2月4日 - 2025年1月29日）は、福井県足羽郡出身の日本の現代美術家であり、教育者でもありました。彼の活動は、絵画、彫刻、写真、ライトアート、パフォーマンスなど多岐にわたりますが、特に1970年代から、通信技術をアートに取り入れた先駆的な活動で知られています。

多様な表現方法と技術の探求

山本は、1955年頃から絵画制作を始め、その後、彫刻、写真、ライトアート、パフォーマンスへと表現の幅を広げていきました。1968年頃には、福井商業高校の視聴覚教育担当として、ビデオ・アートに着手しました。そして1971年より、「ネットワーク・アート・ゲーム」の制作を開始し、1976年には「ネットワーク・サウンド・インスタレーション」を発表するなど、初期から通信技術をアートに応用する試みに挑戦しています。1988年以降は、「通信連画連歌」、「通信風景楽譜、通信図形楽譜」、「通信サイコロ楽器」、「通信障子楽器」など、さまざまな形態のネットワークアートを制作しました。

1994年には携帯電話を導入した「ユビキタス・ネットワークアート」を発表。2004年には「通信連画連歌屏風」、2005年には「通信パノラマ障子楽器」と、技術の進歩とともに表現を進化させました。これらの作品を通して、山本は「田農作家・電脳作家」としての独自の立場を確立しました。

教育者としての貢献

山本は、美術家としての活動だけでなく、教育者としても多大な貢献をしました。小学校、中学校、高校、短期大学、大学、大学院の各教育機関で教鞭をとり、名古屋造形芸術短期大学、武蔵野美術大学、京都精華大学（映像メディア研究所所長）などで後進の育成に尽力しました。教育者としての経験は、彼の作品にも影響を与え、アートとテクノロジーの融合を追求する姿勢につながっています。

国際的な活動と評価

山本の作品は、国内外の多数の展覧会で展示されています。1975年には、サンパウロ・ビエンナーレに日本から初めてヴィデオ・アート作品として「通信ネットワーク ゲーム インスタレーション」を出展。これは、サテライトを前提とした画期的な作品でした。

その他、ドクメンタ、ヴェネチア・ビエンナーレなど、国際的な美術展にも多数参加しました。また、1981年には、ニューヨーク近代美術館企画の「東京から福井と京都ビデオ展」が6か国36都市を巡回するなど、国際的な評価も高く、メディアアートの分野におけるパイオニアとして、世界的に認知されています。

代表的な展覧会と活動

1968年：第8回現代日本美術展（東京都美術館）
1968年：現代美術の動向展（京都国立近代美術館）
1971年：世界初の一般観客参加型「通信ネットワーク ゲーム インスタレーション」
1973年：京都ビエンナーレ'73（京都市美術館）
1974年：第11回東京ビエンナーレ（東京都美術館）
1975年：第13回サンパウロ・ビエンナーレ
1977年：ドクメンタ6（西ドイツ）
1981年：ニューヨーク近代美術館企画「東京から福井と京都ビデオ展」
1982年：第4回シドニー・ビエンナーレ
1987年：「ドクメンタ8」映像部門選考委員
1989年：「紙と電子メディアの出会い展」で日本初の「通信連画展」
1990年：世界初の国際ISDNによる「日仏ネットワーク・アート」
1992年：「ドクメンタ9」「エレクトロニック・カフェ」
1993年：第45回ヴェネチア・ビエンナーレ「カシノ・コンテナ」
2010年：日米初期ビデオアート展（横浜美術館、国立国際美術館ほか）

受賞歴

2015年には、第18回文化庁メディア芸術祭功労賞を受賞し、その長年の功績が認められました。

参考文献と外部リンク

山本の活動については、以下の参考文献や外部リンクでさらに詳しく知ることができます。

「アルスエレクトロニカ 20年史」P286〜P291（MIT出版）
「場的哲学（ユビキタス アート）」（蘆岳書院）
「季刊・武蔵野美術 76号〜81号」（武蔵野美術大学出版）
「Famous」(Contemporary Artists P6~p15) （World of Arts スエーデン）
K-bit Museum メディア・アート美術館/Network Art/Media Art

山本圭吾は、メディアアートの黎明期から、テクノロジーとアートの融合を追求し、国際的な舞台で活躍した先駆者です。彼の作品は、現代のデジタルアートの基礎を築き、後進のアーティストたちに大きな影響を与え続けています。

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