山本潔

山本潔：戦後日本の労働運動と労使関係研究の巨匠

山本潔(1933-2020)氏は、日本の労働問題研究において卓越した功績を残した学者です。東京大学社会科学研究所名誉教授として、長年にわたり労働市場や労使関係の研究に尽力し、その業績は日本の労働研究に多大な影響を与えました。

北海道から東大へ、そして研究の道へ

1933年、北海道に生まれた山本氏は、東京大学経済学部を卒業後、同大学大学院応用経済学博士課程に進学します。1963年には単位取得満期退学という形で大学院を修了し、東京大学社会科学研究所の助手として研究の道を歩み始めました。その後、法政大学経済学部助教授を経て、1970年に母校である東京大学社会科学研究所助教授に就任、後に教授に昇進します。1993年には東京大学名誉教授の称号を得て、信州大学教育学部教授を1998年まで務めました。

戦後日本の労働運動と労使関係：歴史と構造の解明

山本氏の研究は、主に戦後日本の労働運動と労使関係に焦点を当てています。特に、大河内一男や氏原正治郎らの先駆的な研究を継承発展させ、独自の視点から日本の労働問題を分析しました。1960～70年代には、戸塚秀夫らと共に日本の新左翼の労働運動に関する貴重な資料を収集し、その成果は現在も東京大学経済学図書館・経済学部資料室に保管されています。これらの資料は、戦後日本の労働運動史研究に欠かせない重要な資源となっています。

多角的な視点からの研究：著書と論文

山本氏の研究成果は、数多くの著書や論文に結実しています。単著としては、『日本労働市場の構造』、『戦後危機における労働運動』、『自動車産業の労資関係』、『日本の賃金・労働時間』、『日本における職場の技術・労働史』など、日本の労働問題の様々な側面を多角的に分析した著作が挙げられます。また、『日本の賃金――その論理と実態』（共著）、『日本における新左翼の労働運動』（共著）といった共著や、多くの分担執筆を通して、日本の労働問題研究に貢献しました。これらの著作は、今日においても労働問題研究の基礎文献として高く評価されています。

業績の意義と影響

山本潔氏の研究は、単なる学問的な成果にとどまりません。彼の緻密な分析と歴史的な視点に基づいた研究は、日本の労働政策や労使関係のあり方について、重要な示唆を与えてきました。その業績は、現代日本の労働問題を考える上で不可欠な基礎となっています。彼の残した膨大な資料と著作は、将来の研究者たちにとっても貴重な財産であり、日本の労働問題研究の発展に大きく貢献し続けるでしょう。彼の研究は、単に過去の労働運動を記録しただけでなく、現代社会における労働問題を考える上で重要な示唆を与え続けています。山本潔氏の功績は、日本の労働研究史に大きな足跡を残したと言えるでしょう。

主要な著書

『日本労働市場の構造』（東京大学出版会、1967年）
『戦後危機における労働運動　戦後労働運動史論 第1巻』（御茶の水書房、1977年）
『読売争議――1945・46年　戦後労働運動史論 第2巻』（御茶の水書房、1977年）
『自動車産業の労資関係』（東京大学出版会、1981年）
『日本の賃金・労働時間』（東京大学出版会、1982年）
『東芝争議――1949年　戦後労働運動史論 第3巻』（御茶の水書房、1983年）
『日本における職場の技術・労働史――1854～1990年』（東京大学出版会、1994年）
『「労資関係・生産構造」――論文集』（ノンブル社、2000年）
* 『日本の労働調査――1945～2000年』（東京大学出版会、2004年）

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