山本義路

山本帯刀：長岡藩の忠義と悲劇

山本帯刀、諱を義路(よしみち)という人物は、江戸時代後期の越後長岡藩を支えた上席家老でした。家臣の中でも高い地位にあり、1300石の知行高を有していましたが、通称の帯刀の方が広く知られています。

名門の出自と家康への恭順

山本氏は、三河国を起源とする名門で、その遠祖は駿河国から三河国へと移り住んだ豪族でした。16世紀には、東三河の有力者として知られ、武田信玄の軍師として名高い山本勘助の弟を始祖とするという説もあります。今川氏の傘下にあった時期もありましたが、その後、徳川家康に恭順し、家康の信頼を得ていました。将軍家直参の身分を持つなど、その地位は盤石なものでした。

藩命による養子と華々しい経歴

弘化2年(1845年)、安田家の子として生まれた義路は、8歳の時、長岡藩の命により、山本家の養子となりました。これは、山本家11代当主が子宝に恵まれなかったためでした。幼少期から文武両道に秀でた神童として知られ、500石の知行を与えられ、側用人見習いとして藩政の中枢に関わりました。やがて養父の隠居に伴い、家督と家老職を継承しました。

慶応改革への協調と戊辰戦争での活躍

幕末の長岡藩では、河井継之助による慶応改革が進められていました。門閥勢力の代表格であった義路でしたが、河井とは友好的な関係を築き、改革に協力しました。その結果、自身の知行高を400石も減らすという決断も行っています。戊辰戦争では、長岡藩の大隊長として出陣し、奮戦しました。長岡城落城後も、殿軍として藩兵や領民の会津への避難を支援しました。

会津での戦い、そして壮絶な最期

その後、義路率いる山本隊は会津若松城の防衛戦に参加しました。しかし、孤立無援となり、官軍に包囲され、義路を含む隊員の大半が戦死しました。捕縛された義路は、降伏を拒否し「藩主われに戦いを命ぜしも、未だ降伏を命ぜず」と述べたと言われています。そして、9月9日、義路は部下の渡辺豹吉と共に斬首されました。

義路の死後、宇都宮藩の戸田三男は、義路が遺した軍資金を用いて、戊辰戦争で戦死した兵士の墓を建立しました。義路の佩刀は現在、長岡市郷土史料館に展示されています。

人物像と山本家のその後

義路は、謹直で争いを好まない人物であったと伝えられています。長岡藩は、戦争の責任を河井継之助と義路に負わせ、降伏しました。山本家は廃絶されましたが、義路の妻千代は、後に再婚し子供をもうけました。義路の妹は安田家の養女となり、結婚しました。明治16年には、河井家と共に家名再興が許されましたが、義路の娘たちは跡継ぎを残すことなく生涯を終えました。そのため、名門山本家の断絶を危惧した人々の計らいにより、大正5年には長岡士族の高野家から養子を迎えることとなり、その養子が後の連合艦隊司令長官、山本五十六となります。

参考文献

家臣人名事典編纂委員会編『三百藩家臣人名事典4』（新人物往来社、1988年）
『改訂増補・大武鑑・中巻』（名著刊行会、1965年）
『長岡市史』（長岡市、1931年）
臼井勝美、高村直助、鳥海靖、由井正臣編『日本近現代人名辞典』(吉川弘文館、2001年)
阿部俊夫『写真で探訪 戊辰戦争史跡 維新黎明 慶應四年 日光口探訪記』
大嶽浩良『カラービジュアル版 下野の戊辰戦争』
小熊よしみ　『山本帯刀と飯寺の戦い』
長岡中学読本　人物篇　八『舊長岡宰山本義路君碑』

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