山本豊市

山本豊市の生涯と芸術

山本豊市（やまもと とよいち、1899年10月19日 - 1987年2月2日）は、日本の20世紀を代表する彫刻家の一人です。東京府東京市（現在の東京都新宿区）に生まれ、本名を豊といいました。彼の芸術家としての生涯は、伝統的な彫刻技法と西洋のモダニズムの融合を追求するものでした。

芸術への道

山本は、まず彫刻家・戸張孤雁に師事し、1918年から3年間、太平洋洋画会研究所でデッサンを学びました。この時期に基礎的な技術を習得し、芸術への情熱を深めました。1923年から1928年までのフランス留学は、彼の芸術観を大きく変える転機となりました。パリのグランド・シュミエールで学び、その後、彫刻家アリスティド・マイヨールの日本人唯一の直弟子として4年間師事しました。マイヨールの影響は、彼の作品に人体美への深い理解と、古典的な均衡感をもたらしました。

独自の作風の確立

帰国後、山本はフランスで学んだ知識と技術を基に、日本の伝統的な乾漆技法を現代彫刻に応用し、独自のスタイルを確立しました。乾漆は、麻布を漆で固めて成形する技法で、これを用いて制作された作品は、独特の質感と温かみを持っています。

受賞と栄誉

1953年、山本は第五回毎日美術賞を受賞し、同年、東京芸術大学教授に就任しました。1957年には芸術選奨文部大臣賞を受賞。さらに、1983年には文化功労者に選ばれるなど、その功績は高く評価されています。没後、正四位、勲二等瑞宝章が追贈されました。

年譜

1899年 - 東京新宿に生まれる。
1917年 - 戸張孤雁に師事。
1923年 - 日本美術院院友に推挙される。
1924年 - フランスへ留学。
1925年 - アリスティド・マイヨールのアトリエを訪ね、師事を許される。
1928年 - シベリア経由で清水多嘉示と帰国。
1939年 - 『マイヨール』論著作、アトリエ社刊『西洋美術文庫』16巻。
1950年 - 新樹会に木内克、清水多嘉示らとともに迎えられる。
1951年 - 第1回サンパウロ・ビエンナーレに出品。
1953年 - 東京藝術大学教授となる。第五回毎日美術賞受賞。
1955年 - 第一回個展（ブリヂストン美術館）。
1956年 - 第28回ヴェネツィア・ビエンナーレに出品。
1957年 - 第二回個展（ブリヂストン美術館）。
1960年 - 大船観音修復制作完成。
1961年 - 日本美術院彫塑部解散。彫刻集団S.A.S結成。
1963年 - S.A.S、国画会と合同。国画会会員となる。
1966年 - 『山本豊市彫刻回個展』（東京藝大陳列館）。
1967年 - 愛知県立芸術大学教授となる。
1968年 - 東京藝術大学名誉教授の称号を受ける。
1970年 - 『彫刻50年-山本豊市作品展』（日本橋髙島屋・名古屋松坂屋・大阪阪神）。
1972年 - 勲三等瑞宝章受章。
1983年 - 文化功労者に顕彰される。
1987年 - 東京にて没。

代表的な作品

『腰かけた女』（ブロンズ、1925年、滞欧作）：マイヨールの影響が色濃く見られる、人体美を追求した作品。
『スペインの娘』（ブロンズ、1926年、滞欧作）：異国情緒と少女の純粋さを表現した作品。
『とぶ』（乾漆、1957年）：乾漆技法を駆使した、生命力あふれる作品。
『エチュード』（乾漆、1959年）：抽象的な形態と素材の質感が調和した作品。

主な作品収蔵先

愛知県美術館
札幌芸術の森美術館
彫刻の森美術館
東京藝術大学
東京国立近代美術館

山本豊市は、その生涯を通じて、古典的な美と現代的な表現を融合させ、独自の芸術世界を築き上げました。彼の作品は、現在も多くの人々に感動を与え続けています。

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