山梨県道212号日影笹子線

山梨県道212号日影笹子線：歴史と自然が織りなす峠道

山梨県道212号日影笹子線は、山梨県甲州市と大月市を結ぶ、歴史と自然豊かな一般県道です。この道は、かつての国道20号（甲州街道）の旧道にあたります。新笹子トンネルの開通によって国道20号のルートが変更された後、1971年に旧道が山梨県に移管され、現在の県道となりました。

全長約10キロメートルにわたるこの峠道は、かつては甲州街道として重要な役割を担い、多くの旅人や商人たちが行き交いました。今もなお、その歴史を感じさせる風景が残されています。特に、文化庁登録有形文化財にも指定されている笹子隧道は、往時の面影を色濃く残す貴重な建造物です。レンガ造りの重厚な構造と、静寂に包まれた隧道の雰囲気は、訪れる者に深い歴史を感じさせます。

笹子峠を越える険しい山道は、自然の雄大さを体感できる場所でもあります。道中には急勾配やカーブが多く、運転には注意が必要です。しかし、その苦労を補って余りある絶景が、ドライバーを待ち受けています。山梨盆地や南アルプスの山々を一望できる眺望は、まさに圧巻です。春には桜、秋には紅葉と、四季折々の美しい景色を楽しむことができます。

一方で、この道は冬期閉鎖が実施されることでも知られています。毎年12月から4月頃にかけて、笹子峠付近は積雪のため通行止めとなります。安全のため、通行を予定されている方は、事前に道路状況を確認することが不可欠です。

現在では、中央自動車道、国道20号の新道、JR中央本線が笹子峠をトンネルで貫通しています。それらの近代的な交通インフラと比較することで、旧道である県道212号日影笹子線の歴史的価値や、自然との共生を改めて感じ取ることができます。

起点となるのは甲州市大和町日影、大和橋西詰交差点。終点は、大月市笹子町黒野田です。両地点とも国道20号と接続しています。周辺には、歴史的建造物や自然豊かな観光スポットが多く存在し、ドライブやハイキングを楽しむ人々にも人気があります。

県道212号日影笹子線は、単なる道路というだけでなく、歴史と自然が一体となった貴重な遺産と言えるでしょう。現代社会において、その歴史的価値と自然の美しさを再認識し、適切な保全と活用が求められています。かつての甲州街道の面影を辿りながら、歴史と自然に思いを馳せる旅へと誘ってくれる道です。

参考文献

佐藤健太郎『ふしぎな国道』講談社〈講談社現代新書〉、2014年10月20日。ISBN 978-4-06-288282-8。

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