笹子峠

笹子峠

笹子峠は、山梨県大月市と甲州市の境界に位置する標高1,096mの峠です。かつては甲州街道の最大の難所として知られ、歴史と自然が豊かな場所です。

歴史

江戸時代、笹子峠は甲州街道の主要なルートであり、江戸と下諏訪のほぼ中間に位置していました。黒野田宿と駒飼宿の間にあるこの峠は、街道の中でも特に険しい場所とされ、旅人にとっては大きな難関でした。

1880年（明治13年）には、明治天皇が山梨巡幸の際に峠近くの甘酒茶屋で休憩されたことから、その跡地に「明治天皇御野立所跡」の石碑が建てられました。この出来事は、笹子峠が歴史的に重要な場所であったことを物語っています。

1920年（大正9年）に旧道路法が施行された際、甲州街道は国道8号（現在の国道20号）に指定されましたが、笹子峠経由ではなく、大月から富士吉田、御坂峠を経由するルートが採用されました。これにより、笹子峠を経由する道は県道に降格されました。しかし、1952年（昭和27年）の新道路法制定に伴い、国道8号が国道20号に変更されると同時に、ルートが再び笹子峠経由に変更されました。

その後、1938年（昭和13年）には峠の頂上直下を貫く笹子隧道（全長240m）が開通しました。さらに1958年（昭和33年）には新笹子隧道（全長2,953m）が開通したことで、国道20号は峠道を通らなくなり、峠道は山梨県道212号日影笹子線となりました。

矢立の杉

笹子峠の大月市側には、樹齢数百年の巨大な杉の木「矢立の杉」があります。この杉は、かつて武士たちが合戦に向かう際に必勝を祈願し、矢を射たことが名前の由来とされています。根回りは14.8m、高さは約26mにも及び、幹の中は空洞になっています。源頼朝もこの地を通った際に矢を射たという伝説も残っています。

江戸時代後期には、甲州街道の名所として多くの紀行文や絵画に描かれました。文化13年（1816年）の渋江長伯『官遊紀勝』、嘉永3年（1850年）の黒川春村『並山日記』、江戸後期の『甲斐捨図紀行』、十返舎一九『金草鞋』などに登場します。また、葛飾北斎は『北斎漫画 七編 甲州矢立の杉』で、歌川広重（二代目）は『諸国名所百景 甲州矢立の杉』でこの杉を描いています。現在では、笹子峠の名物である「笹子餅」のパッケージにもこの絵が使用されています。

1960年（昭和35年）には、山梨県指定天然記念物に指定され、周辺はハイキングコースとして整備されています。

笹子峠（旧甲州街道）ハイキングコース

笹子峠を歩くハイキングコースは、歴史的な旧甲州街道を辿る道です。東側（大月側）からは、国道20号沿いの黒野田宿を経て、新田下バス停から登りが始まります。山道と山梨県道212号日影笹子線が交互に現れながら、矢立の杉を通過し、笹子隧道へと続きます。県道は隧道を抜けますが、旧街道はトンネル脇から山道に入り、笹子峠に到達します。峠からは、笹子雁ヶ腹擦山への登山道が分岐しています。

甲府側へ下ると、トンネル西側で大月市から甲州市に入ります。県道から山道に入り、沢を数カ所渡ると、清水橋付近で再び県道に合流します。旧道は桃の木茶屋跡のあたりで笹子沢の対岸に渡っていましたが、現在は通行不可となっています。徒歩の場合は、県道を通って駒飼宿へ向かいます。旧道を経由して大和橋の甲府側で国道20号に合流します。

都市圏の境界

笹子峠は、都市圏の境界としても重要な意味を持っています。峠の西側、国中地方は中部地方との結びつきが強い一方、東側の郡内地方は関東地方との結びつきが強いという地域特性を持っています。

関連項目

• - 甲州街道
• - 国道20号
• - 笹子トンネル
• - 日本の峠一覧
• - 笹子餅
• - 笹子駅

外部リンク

• - 国土地理院 地図閲覧システム 2万5千分1地形図名：笹子（甲府）

もう一度検索