山浦貫一

山浦貫一は、明治26年（1893年）3月20日に長野県小県郡川辺村（現在の長野県上田市）に生まれ、昭和42年（1967年）9月26日に74歳でその生涯を終えた、激動の時代を生きたジャーナリストであり政治評論家です。

地元の旧制上田中学（現在の長野県上田高等学校）を経て早稲田大学政治経済学部で学び、大正8年（1919年）に時事新報の記者としてキャリアをスタートさせました。その後、活躍の場を東京日日新聞（大正13年）、新愛知東京支社（大正16年）へと移し、さらに国民新聞、読売新聞では論説委員として筆を振るいました。読売新聞を定年退社したのは昭和23年（1948年）のことです。

ジャーナリズムの世界にとどまらず、幅広い公的な活動にも関与しました。戦後の昭和21年（1946年）には憲法普及会の理事を務め、新憲法の周知に尽力。その後も東京新聞の編集顧問、NHKの中央番組審議委員、さらには中央選挙管理委員といった重要な役職を歴任し、戦後日本の発展にも寄与しました。

彼の評論活動は多岐にわたり、特に当時の政治情勢や政治家に対する鋭い分析で知られました。晩年には、東京新聞に掲載されていたコラム「放射線」で、「池上五六」というペンネームを用い、反共的な論調の評論を発表しています。

政界にも広い人脈を持ち、当時の有力政治家である森恪や鳩山一郎らとは個人的な親交があったことが伝えられています。特に、東京日日新聞記者時代には、光文事件に際して政治部長の責任問題が浮上した際、ジャーナリストとしての倫理観から、岩淵辰雄らと共に部長の排斥を求める運動を展開するなど、信念を貫く一面も持ち合わせていました。

山浦貫一は多作な著述家でもあり、政治、人物、議会制度、憲法などに関する多数の単著、編著、論文を発表しています。代表的な単著としては、初期の政界人物評である『政局を繞る人々』や『政治家よ何処へ行く』があり、当時の政治力学や人物像を知る上で貴重な資料となっています。また、親交の深かった森恪に関する詳細な評伝も複数手掛けています。憲法普及会理事としての経験に基づいた『新憲法の解説』や、金森徳次郎との共編による日本政治史に関する著作なども知られています。

昭和42年（1967年）9月26日、急性肺炎のため74歳で逝去。その功績に対し、死去翌日の政府持ち回り閣議において、正四位勲二等瑞宝章が贈られることが決定されました。葬儀・告別式は9月29日に青山葬儀所で行われ、国鉄総裁を務めた十河信二が葬儀委員長を務めました。

山浦貫一は、明治・大正・昭和にかけての激動期に、ジャーナリスト、評論家、そして公職者として日本の政治・社会に深く関わり、その観察眼と筆力をもって時代の証言者となった人物と言えるでしょう。

もう一度検索