山田伝

山田伝：日系二世の野球人生

山田伝（やまだでん）は、1914年2月5日、アメリカ合衆国カリフォルニア州サクラメントで生まれました（戸籍上の出生地は和歌山県）。日系二世としてアメリカで育ち、その後、日本のプロ野球界で輝かしい経歴を築き上げた人物です。外野手として主に活躍しましたが、投手としても登板経験があり、その多才ぶりは特筆に値します。

アメリカでの野球経験と日本プロ野球への道

山田はアメリカで野球を始め、エリグローブ高校卒業後、ノンプロチーム「スタクトン大和」、セミプロチーム「アラメダ児野オールスターズ」を経て、1937年、同チームの日本遠征時にスカウトされ、阪急軍に入団しました。アメリカでの野球経験が、彼の日本での成功の礎となったと言えるでしょう。

阪急軍での活躍：俊足と堅実な守備

戦争による中断を挟みながらも、1938年秋から1946年まで、阪急軍の中堅手としてほぼフル出場を果たしました。1番打者としてチームを牽引し、その俊足を生かした積極的な走塁と堅実な守備で、チームに貢献しました。特に1940年には打率.272でリーグ5位となり、ベストナイン（外野手部門）を受賞するなど、高い打撃センスも持ち合わせていました。1942年、1943年にはリーグ上位の打率を記録し、1939年と1943年には盗塁王にも輝いています。特に1943年の56盗塁は、戦前のシーズン最多記録として長く記憶されました。

稀有な二刀流：投手としての活躍と驚異的な勝利

山田は外野手としての活躍が主でしたが、投手としても1勝を記録しています。1940年4月6日、南海ホークス戦で完投勝利を挙げたこの試合は、32対2という驚異的な得点差で、現在もプロ野球記録として残る最多得点・最多得点差の試合となっています。左投げながら、二塁手としても出場経験があり、そのユーティリティ性も彼の魅力の一つでした。

ユニークな捕球スタイル：「ヘソ伝」と「カンガルーキャッチ」

山田は非常に俊足の選手として知られていましたが、守備においても独特のスタイルを持っていました。どんな打球も体の中央、へそのあたりで捕球するその姿は「ヘソ伝」と呼ばれ、ファンの間で人気を博しました。本人はこのスタイルを「カンガルーキャッチ」と呼んでいたそうです。

コーチ・通訳としての第二の人生

現役引退後は、会社の通訳を務めた後、阪神タイガースで通訳、スコアラー、コーチとして長年活躍しました。外野守備・走塁コーチ、通訳など幅広い役割を担い、指導者としても野球界に貢献しました。

語学力と国際性

アメリカで育った山田は英語に堪能で、阪神在籍時には通訳としてチームを支えました。チームメイトであったハワイ出身の上田藤夫のハワイ式英語は、アメリカ本土出身の山田には理解できなかったというエピソードも残っています。このエピソードは、当時のプロ野球界における国際的な側面の一端を垣間見せるものです。

まとめ：時代を超えて輝く野球人生

山田伝の野球人生は、日系二世としてアメリカで育ち、日本のプロ野球界で活躍したという、非常にユニークなものです。俊足、堅実な守備、そして独特の捕球スタイル「ヘソ伝」で人気を博し、外野手としてだけでなく、投手としても活躍した彼の才能は、多くのファンを魅了しました。コーチ・通訳として指導者としての道を歩んだ後の人生も、野球界への貢献として記憶されています。山田伝の野球人生は、時代を超えて語り継がれるべき、貴重な物語です。

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