山田浅右衛門

山田浅右衛門の歴史と影響

山田浅右衛門（やまだ あさえもん）は、江戸時代に活躍した試し斬りと処刑の役割を担った著名な人物です。彼は「御様御用」や「首切り浅右衛門」という名でも知られ、山田家の当主として代々この役目を引き継いできました。

背景と前史

江戸時代初期、試し斬りの技術は重要であり、谷衛好や谷衛友親子からその技を受け継いだ中川重良が第一人者として知られていました。重良の弟子、山野加右衛門永久は特に有名で、約6千人の罪人を斬り、その供養のために永久寺を建立しました。加右衛門の子、勘十郎久英は御様御用として試し斬りと処刑を行う役目を果たしましたが、その後山野家は役目を解かれ、山田浅右衛門家がこの役割を引き継ぐこととなりました。

歴代の山田家の当主は、こうした先人たちの技術と経験を受け継ぎ、技術ある弟子たちを育てていきました。山田家は、試し斬りを行う際に、自らの技を伝えるため、幕府に対して次世代への指導を懇願しました。この背景から、山田家が御様御用の名手として定着することになったのです。

山田浅右衛門家の地位と役割

山田浅右衛門家は、正式な旗本や御家人ではなく浪人という立場にありました。このことは、死の穢れにまつわる役目に由来しています。5代目の吉睦は、将軍徳川吉宗の前で試し斬りを行い、その場で幕臣へと取り立てられる機会を失いました。これが結果的に、山田家が浪人として役目を担う慣習となった原因です。

また、山田家は多くの弟子を抱え、当主が役目を果たせない場合は弟子が代行しました。実子にこの役目を継がせず、有能な弟子を跡継ぎとすることで、技術の維持と向上を目的としていました。この考え方は、罪人の首を斬るという残酷な役割を実子に承継させることへの忌避感からも来ているとされています。

収入源と財政状態

山田家は浪人であったため、定まった知行を幕府から得ていませんでしたが、様々な収入源を持っており、非常に裕福でした。公儀御様御用として幕府からの報酬があり、さらに処刑を行うことで得られる収入も重要でした。最大の収入源は、処刑された罪人の死体を用いた「試し斬り」にあり、刀の切れ味を試すために必要とされました。このため、一人の死体で何振りもの刀の試し斬りを行い、斬った死体を再利用することもありました。

さらに、山田家は刀剣の鑑定を行い、都内の富裕層からの依頼を受けて手数料を得ていました。このように、幅広い人脈を利用して刀剣を売買することもあり、また、処方薬の製造も行うことで、様々な収入を得ていました。特に労咳に効くとされる丸薬を販売し、莫大な金額を得ていたのです。

その他の逸話と影響

山田家を取り巻く逸話も数多くあり、処刑役の同心が首を斬る度に報酬が発生したことなど、彼らの人間関係の複雑さも物語っています。明治時代に入ると、山田家は「東京府囚獄掛斬役」に取り立てられ、引き続きその役割を担いましたが、斬首刑の廃止に伴い、伝統的な役割が終焉を迎えることになります。

1881年には山田家による最後の斬首刑が行われ、以後、その名は歴史の中で消えていきました。しかし、山田家の存在は多くの文学や映画などに影響を与え、今尚人々の記憶に残る存在となっています。

まとめ

山田浅右衛門家は、江戸時代の厳しい役割を担いながらも、技術の継承と社会的影響を及ぼした家系でした。その役割は悲劇的な一面を持ちながらも、彼らの存在は日本の歴史において忘れてはならない部分です。

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