山町筋

高岡市山町筋：土蔵造りが語る、商都の記憶

富山県高岡市の中心部に位置する山町筋は、江戸時代から明治時代にかけて発展した商人町です。特徴的なのは、重厚な土蔵造りの建物が軒を連ねる美しい景観。この町並みは、国の重要伝統的建造物群保存地区として選定され、さらに日本遺産「加賀前田家ゆかりの町民文化が花咲くまち高岡」の構成文化財としても認定されています。

起源と発展

山町筋の歴史は、1609年（慶長14年）に加賀前田家2代当主である前田利長が高岡城を築いたことに始まります。城下町として発展させるため、利長は北陸道のルートを変更し、碁盤目状に区画された町を整備。その中心に位置したのが、御所車（御車山）を与えられた山町でした。しかし、1615年（慶長20年）の一国一城令により高岡城が廃城となると、町は一時衰退。3代利常は、町民の転出禁止や、高岡を藩の流通拠点とする政策を打ち出し、商工業都市としての再生を図りました。

大火からの復興と土蔵造りの町並み

1900年（明治33年）に発生した大火は、山町筋の家屋のほとんどを焼き尽くしました。しかし、前年に制定された「建築制限規則」に基づき、旧北陸道沿いの建物は土蔵造りで再建されることになります。これが、現在見られる山町筋の景観を特徴づける土蔵造りの町並みの起源です。黒漆喰の壁、黒瓦葺の屋根、千本格子の窓など、重厚な意匠が並びます。また、西洋建築の要素を取り入れたデザインも特徴的で、アカンサスの葉の模様が施された鋳物鉄柱や、赤レンガの防火壁などが、和洋折衷の独特な雰囲気を醸し出しています。

町並みの保存と活用

近年、老朽化した土蔵造りの家屋の取り壊しが進んだ時期もありましたが、1992年（平成4年）に「土蔵造りのある山町筋まちづくり協議会」が発足し、町並み保存の機運が高まりました。その結果、2000年（平成12年）に重要伝統的建造物群保存地区に選定され、高岡市や県、まちづくり協議会が連携して、景観保存整備や観光事業に取り組んでいます。電線地中化や提灯台の復元など、景観に配慮した整備が進められ、観光客向けの無料休憩所や駐車場の整備も行われています。

山町筋の見どころ

山町筋には、数多くの歴史的建造物や施設が存在します。

菅野家住宅（重要文化財）: 土蔵造りの商家を公開しています。
高岡市土蔵造りのまち資料館（旧室崎家住宅）: 土蔵造りの商家を利用した資料館です。
旧高岡共立銀行本店: 赤レンガ造りの洋風建築です。
高岡御車山会館: 高岡御車山祭に関する展示施設です。

山町筋の祭り

山町筋の御車山祭は、毎年5月1日に行われる高岡関野神社の春季例祭です。「御車山」と呼ばれる豪華絢爛な7基の曳山が、山町筋を巡行する姿は圧巻です。御車山は、豊臣秀吉の御所車を前田利家が拝領し、それを山町に与えたものが起源とされています。2016年（平成28年）にはユネスコの無形文化遺産にも登録されました。

その他にも、1月中旬の山町筋の天神様祭や、3月中旬の山町筋のひなまつり、8月中旬の夏祭り、8月下旬の高岡山町筋土蔵造りフェスタなど、年間を通して様々な行事やイベントが開催されています。

山町筋は、歴史的な建造物や伝統文化が息づく、魅力あふれる観光スポットです。高岡市を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。

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