山県周南

山縣周南

山縣周南（やまがた しゅうなん）は、江戸時代中期に活躍した儒学者です。貞享4年（1687年）に生まれ、宝暦2年8月12日（1752年9月19日）に66歳で没しました。荻生徂徠の高弟として知られ、長州藩の藩校である明倫館の二代目学頭を務めました。彼の学問は漢詩、国史に精通しており、教育者としても高い評価を得ています。

生涯

周南は周防国右田鈴屋村（現在の山口県防府市）で、山縣良斎の次男として生まれました。号の「周南」は生地に由来します。父の良斎は毛利家の一門である毛利就信に仕える儒学者であり、幼い頃から学問に励む環境にありました。父の教育は厳格で、高楼に籠って学問に励み、必要がなければ地上に降りることは許されなかったといいます。

19歳で江戸に遊学し、荻生徂徠の門を叩きました。3年間徂徠に師事し、その後萩に戻りますが、江戸出張の際や書簡を通して、引き続き徂徠の薫陶を受けました。

26歳の時、朝鮮通信使が赤間関（現在の山口県下関市）に来訪した際、長州藩の学者として朝鮮の学者と詩文を交わしました。その際、周南の詩才は高く評価され、朝鮮通信使の正使に特別に接見を許されたといいます。この出来事は、周南と徂徠学派の名声を高める一因となりました。

31歳で藩主の侍講となり、藩主に従い度々萩と江戸を往復しました。明倫館の開学にあたっては、館の儀式や学規などを制定しました。初代学頭の小倉尚斎の没後、二代目学頭に就任し、学者、医者、官吏など多くの人材を育成しました。また、藩の要人も多く門下に抱え、藩政にも深く関与しました。

59歳頃に川魚を食べて体調を崩し、病に伏せるようになりました。自身の文業について服部南郭に後事を託した後、66歳でその生涯を閉じました。遺体は萩の保福寺に埋葬されました。

性格は温厚で、川遊びを好んだと伝えられています。江戸では徂徠や南郭ら蘐園（けんえん）一門を招いて川遊びを催し、没する直前にも京都で川遊びを楽しんだという逸話が残っています。

大正4年（1915年）には、その功績が認められ、従四位を追贈されました。

学統

周南は、荻生徂徠がまだ名を知られていない頃から師事した愛弟子であり、長州藩、そして西日本に徂徠学（古文辞学）を広める上で重要な役割を果たしました。後世の儒学者である広瀬淡窓は、周南について「古文辞を固守するようなところはない」と評しており、周南自身も仁斎学に共感を示し、伊藤東涯と交流するなど、柔軟な学問交流を行っていました。しかし、日野龍夫によれば、周南の詩文の作風は古文辞風であるものの、特に際立った特徴はないとされています。

また、京都の古医方派とも親交があり、香川修庵、山脇東洋、吉益東洞などの医師と交流を深めたことも特筆されます。

著作

『周南文集』: 明倫館の設立に関する記録や、周南の行状などが収録されています。また、『周南文集』の稿本には、『周南続稿』とは異なる文章も収録されています。
『為学初問』: 小論文集です。
『作文初問』: 古文辞派の主張を中心とした漢文の手引書です。
『講学日記』: 学問上の覚え書きをまとめたものです。
『宣室夜話』: 周南の作ではないという説もあります。
『周南続稿』: 『周南文集』に収録された詩文に加えて、未収録の詩文も収録されています。
『周南先生医談』
『江氏家譜』: 藩命によって編纂された毛利家の系譜です。

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