山錦善治郎

山錦善治郎の生涯

山錦善治郎（やまにしき ぜんじろう）、本名は山田善次郎（やまだ ぜんじろう）。1898年4月17日、大阪府大阪市大淀区で生まれた。彼は出羽海部屋に所属し、大相撲の世界で名を馳せた元力士であり、最高位は東関脇である。身長173cm、体重107kgを誇り、その体格を活かした力強い取り口が印象的であった。

出身と相撲界への道

善治郎は魚屋の次男として裕福ではない家庭に育ったが、関西大学専門部に進学し、学生相撲での活躍が目覚ましかった。大学を辞めた彼は、故郷の横綱・大錦卯一郎に憧れ、出羽海部屋に入門。この時、四股名の「山錦」は本名「善治郎」と大錦の名前から一文字ずつ取ったものである。1917年5月場所にて初土俵を踏み、その後1922年1月場所には十両に昇進し、1923年1月場所には新入幕を果たすこととなった。

花開く力士生活

1927年10月には関脇に昇進し、常に幕内上位での活躍を続けた。特に1930年5月場所では、前頭5枚目として新大関玉錦に初黒星を与え、また横綱宮城山も破る快挙を遂げた。この場所で11戦全勝を達成し、平幕優勝を果たす。彼は初の平幕全勝優勝者となり、相撲界に名を刻んだ。

善治郎の取り口は、「押し一本槍」として知られ、出足の鋭さから猪突猛進のスタイルで敵を圧倒した。その攻撃的なスタイルの影響で、鼻を痛めることも多く、最終的には医者に頼んで鼻骨を削ってしまったこともある。特に、猛闘を重ねた玉錦との対戦では、全体の成績が1勝4敗と苦戦を強いられたが、宮城山相手には金星を手にし、1930年から1931年にかけて3連勝を果たすなど、多くの強敵相手に勝利を収めた。

春秋園事件と相撲界からの脱退

しかし、1932年1月に発生した春秋園事件により、大関や関脇の仲間とともに相撲協会を脱退、新興力士団に加わることとなった。彼は関西角力協会においても指導者としての手腕を発揮し、天竜の参謀として後進の育成に貢献した。これは大阪出身の力士として、地元の後援者を持っていたからこそ実現できた仕事であった。

山錦は天竜と共に活動を続け、1937年12月の団体解散までその関係を続けた。しかし彼は、相撲協会に戻ることはありませんでした。後に娘の証言から「弓引き役になった自分が、協会には戻れないと思った」という気持ちがあったことが明かされた。1940年代頃には相撲の世界から遠ざかり、「山錦旅館」やプラスチック工場などの経営に乗り出し、別の道を歩み始めた。

死去とその後

1972年5月27日、山錦は逝去。彼が亡くなった翌日、同じく学生相撲出身の力士・輪島が幕内初優勝を果たすなど、相撲界における山錦の存在感が改めて強調される出来事でもあった。また、劉豪太郎が2016年に初優勝を決めた際には、山錦以来86年ぶりの快挙となった。

主な成績

通算成績は189勝145敗の勝率0.566を記録し、幕内成績では155勝132敗、39場所に在位した。三役においても10場所在位を果たし、金星は合計6個を手にした。彼の歩んだ道は、多くの力士にとっても大きな道標となり、相撲界の歴史にその名を刻むこととなった。

もう一度検索