大錦卯一郎

大錦卯一郎の生涯

大錦卯一郎（おおにしき ういちろう）は、1891年11月25日に大阪府大阪市南区鍛冶屋町で生まれました。出羽海部屋に所属し、相撲界での成績やエピソードから彼は第26代の横綱に君臨しました。本名は細川卯一郎（ほそかわ ういちろう）です。

学歴と初土俵

彼の学歴は特異で、旧制天王寺中学校を卒業したことから知性と運動能力を兼ね備えていましたが、陸軍幼年学校の受験には体重超過で失敗。また、常陸山谷右エ門への入門願いをローマ字で送付したことがきっかけとなり、出羽海部屋に入門します。1910年に初土俵を踏んだ際には、「大錦」という四股名が付けられましたが、これは故郷である大阪に錦を飾るとの願いが込められています。

成績と昇進

大錦は、初土俵から比較的早く頭角を現し、1915年には新入幕を果たし、新たな挑戦を続けました。特に1917年の1月場所では、太刀山との対戦が注目され、全勝での幕内最高優勝を達成。これにより横綱昇進が決まりました。

彼の優勝が決まった瞬間、国技館はまさに熱狂の渦に包まれ、各種の物が舞い上がりました。これは、太刀山が長年君臨していた横綱の世代交代を象徴する重要な取り組みでした。

脅威の取組

1921年には三杦磯善七との取組が行われ、2時間5分という前代未聞の時間を要したことが話題となりました。仕切り直しが何度も行われ、その後の混乱も含めて、この取組は後の角界に大きな議論を引き起こしました。最終的に水入りになるも、混乱の中で引分となり、三杦磯は怪我の影響での休場が決定、結果的には大錦にも影響がありました。

突然の廃業

1922年、大錦は三河島事件の調停に関わりながら、責任を感じて自ら廃業を決意します。日比谷の宴で髷を落とした際、その光景に周囲は驚愕しました。年齢的にはまだ衰えを見せず、現役を続ければさらに優勝を重ねる可能性があったものの、引退後の親方就任の意向もなかったため、周囲は彼を引き止めることができませんでした。廃業後は築地に「細川旅館」を経営しつつ、早稲田大学に入学、その後は報知新聞で相撲評論家としても名を馳せました。

人物像

大錦の取り口は典型的な左四つで、速攻相撲が特徴でした。彼は立ち合いの研究を重ね、相手の癖を読み取った上での戦術で多くの勝利を収めました。そのため、近代相撲の先駆者としても名を刻んでいます。また、葉巻を嗜む一方で、真面目な性格を持ち、酒や女遊びには一切手を出しませんでした。その姿勢から、相撲界の権威や情に批判的だったことも影響したと言われています。

日本の相撲界において、大錦卯一郎の存在は特異で、彼の歴史に残る成績とエピソードは今も語り継がれています。1941年に49歳でこの世を去った彼は、横浜市鶴見区の總持寺に埋葬されています。

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