岑参

岑参（しん しん、715年 - 770年）は、中国唐代の詩人であり、岑嘉州（しんかしゅう）とも称されます。詩人の高適（こう せき）と並び称され、唐代を代表する詩人の一人です。曾祖父は岑文本（しん ぶんぼく）で、代々官僚を輩出した家柄でした。

生涯

岑参は天宝3載（744年）に進士に及第しました。その後、節度使の幕僚として長く西域に滞在し、辺境の地で軍事や外交に携わりました。安禄山の乱が起こると、粛宗（しゅくそう）がいた鳳翔（ほうしょう）に駆けつけ、杜甫（とほ）らの推薦により右補闕（うほけつ）に任じられます。その後、粛宗に従って長安（ちょうあん）に戻り、乾元2年（759年）には虢州（かくしゅう）の刺史（しし）となりました。

宝応元年（762年）には太子中允（たいしちゅういん）・殿中侍御史（でんちゅうじぎょし）となり、関西節度判官（かんせいせつどはんがん）を兼ねます。永泰元年（765年）には嘉州（かしゅう）の刺史となりましたが、大暦3年（768年）に官を辞して故郷に帰ろうとしたところ、反乱軍に阻まれて成都（せいと）に留まることになります。そして、大暦5年（770年）に成都で56歳で亡くなりました。

詩人としての評価

岑参は、十余年にわたる戦地での経験を基に、悲憤慷慨の詩風を確立しました。彼の詩は、「識度清遠、議論雅正」と同時代の人々に評され、その識見の高さと清らかで奥深い情感、議論の正しさが評価されました。作品集として『岑嘉州集』7巻があります。岑参の死後、子の岑佐公（しん さこう）が遺文を収集し、杜確（と かく）が『岑嘉州詩集』8巻を編纂しました。現存する詩は403首で、そのうち70余首が辺塞詩（へんさいし）と呼ばれる、辺境の地や軍隊生活を題材にした詩です。また、「感旧賦（かんきゅうのふ）」一篇と「招北客文（しょうほくかくのぶん）」一篇が墓碑銘として残されています。

岑参の詩は、辺境の厳しい自然や戦場の悲惨さを描きながらも、力強い生命力と希望に満ちています。その詩風は、後世の詩人たちに大きな影響を与え、現在でも多くの人々に愛されています。

代表作としては、「白雪歌送武判官帰京（はくせつか ぶはんがんのききょうをおくる）」などがあります。


辺塞詩: 辺境の地や軍隊生活を題材にした詩
代表作: 白雪歌送武判官帰京

もう一度検索