岡本梅林公園

岡本梅林公園：歴史と自然が織りなす梅の楽園

神戸市東灘区岡本に位置する岡本梅林公園は、約4566平方メートルの広さを誇る都市公園です。正式名称は岡本公園ですが、地域住民からは「岡本梅林公園」として親しまれています。六甲山地の高台に位置し、約200本の梅の木が植えられており、2月下旬から3月上旬にかけて見頃を迎え、多くの観梅客で賑わいます。開花時期には梅まつりが開催され、地域を代表するイベントとなっています。

悠久の歴史を刻む梅林

岡本梅林の歴史は古く、江戸時代には丹波の栗や吉野の桜と並んで名所として知られていました。尼崎藩の城主は観梅の宴を催すなど、地域に深く根付いた文化として発展しました。当時の梅林は山頂から見下ろすと、一面に白い梅の花が咲き誇り、まさに絶景だったと言われています。五百山宝積寺という禅寺は梅林に囲まれ、「梅の寺」と呼ばれていました。多くの文人墨客が訪れ、詩歌や絵画作品を残しており、その中には藤沢南岳や岡田半江らの名も含まれます。

梅は観賞用だけでなく、商品作物としても栽培されていました。岡本の名産であった「重五郎梅」は、大粒で味が良く、高級梅干しとして珍重されました。また、岡本特有の紅梅である「唐梅」は染料として大阪に出荷され、地域経済にも貢献していました。日清戦争中には、大阪第四師団に梅干を献納した記録も残っています。

明治時代中期以降は、鉄道の開通により阪神間の観梅名所として発展しましたが、一方で鉄道開通に伴う開発により梅林の衰退も招きました。宝積寺の周辺では、阪急電鉄神戸線の開通直後に梅林が失われたという記録もあります。それでもなお、大正10年発行の武庫郡誌には、山手の稜線から山裾にかけて広大な梅林が広がっていたことが記されています。

昭和8年、宝積寺の和尚である鹿岳光雄は『小羅浮：岡本梅郷保勝記』を著し、歴史的景観の保護を訴えました。しかし、阪神大水害、第二次世界大戦、戦後の宅地開発などにより、梅林はほとんど消滅してしまいました。

再生への歩み

現在の岡本梅林公園は、神戸市の緑化運動「グリーンコウベ作戦」の一環として、1982年に整備されました。楊貴妃、本黄梅、そして大宰府天満宮から贈られた飛び梅など、様々な品種の梅が植えられています。

忘れられた名産、重五郎梅の復活

かつて岡本の名産であった重五郎梅は、梅林の消滅とともに忘れ去られていましたが、2009年に始まった「岡本の梅ブランディング事業」を機に、現存する原木が発見されました。地元住民の努力により、和歌山県田辺市の農園の協力を得て接ぎ木による苗の育成が行われ、現在では岡本梅林公園にも植えられています。この取り組みは、地域の歴史と文化を継承する上で重要な役割を果たしています。

アクセス

阪急神戸本線「岡本駅」北へ約700m
JR神戸線（東海道本線）「摂津本山駅」北へ約1km

岡本梅林公園は、歴史と自然が調和した美しい空間です。訪れる人々にやすらぎと感動を与え、地域の活性化にも貢献しています。

もう一度検索