岡本清

岡本 清（おかもと きよし）

日本の会計学界における重鎮として知られる岡本清（1930年3月25日生）は、原価計算および管理会計の分野を専門とする研究者です。千葉県船橋市に生まれ、長年にわたり大学教育と研究活動に従事しました。一橋大学および東京国際大学において名誉教授の称号を授与されており、これらの機関で多くの学生や研究者を指導しました。

人物と業績

岡本氏は、その卓越した研究成果により、権威ある賞を数多く受賞しています。特に、日経・経済図書文化賞や日本会計研究学会学会賞は、同氏が会計学研究において打ち立てた業績を広く示すものです。また、第16期日本学術会議の会員として、日本の学術振興にも貢献しました。2009年には、その功績が称えられ、瑞宝中綬章を受章しています。

研究者としてのキャリアは、松本雅男氏に師事したことに始まります。岡本研究室からは、会計学界や実業界に多大な影響を与える多くの人材が輩出されました。一橋大学名誉教授である廣本敏郎氏（公認会計士・監査審査会長を歴任）や尾畑裕氏、慶應義塾大学名誉教授の小林啓孝氏らは、その代表的な弟子たちです。さらに、モルガン銀行日本代表を務めた元参議院議員の藤巻健史氏や、公認会計士であり情報公開・個人情報保護審査会委員を務める石川千晶氏など、実務家としても成功を収めた多くの人物が岡本氏の指導を受けています。

私生活においては、児童文学の分野で活躍し、日本児童文芸家協会の顧問や児童文化功労者としても知られる翻訳家の岡本浜江氏を妻に持ちます。また、四人の息子に恵まれ、それぞれが異なる分野で専門家として活躍しています。長男の岡本大輔氏は経営学者として慶應義塾大学商学部教授を務め、義塾賞を受賞。次男の岡本希輔氏は鳶職として有限会社鳶地庫の代表取締役を務める傍ら、コントラバス奏者としても活動しています。三男の岡本秀輔氏は計算機工学者として成蹊大学理工学部情報科学科教授、四男もそれぞれの道で活躍しています。

学歴と職歴

岡本氏の学歴は、1944年の陸軍幼年学校入学に始まり、1947年に東京都立第三中学校（現東京都立両国高等学校・附属中学校）を卒業しました。その後、1954年に一橋大学商学部を卒業し、同大学大学院商学研究科に進学。1960年に博士課程を修了しました。研究者としての基盤を固める中で、1964年には一橋大学より商学博士の学位を授与されています。さらに、1965年にはフルブライト交換教授研究員プログラムを利用してミシガン大学に留学し、国際的な視野を広げました。

職歴としては、大学院修了後の1960年に日本学術振興会の奨励研究生としてキャリアをスタートさせました。1961年には母校である一橋大学商学部の専任講師に就任。1964年には助教授、そして1971年には教授へと昇進し、長きにわたり一橋大学で教育・研究活動を推進しました。1991年には日本原価計算研究学会の会長を務め、同学術分野の発展にリーダーシップを発揮しました。1993年に一橋大学名誉教授の称号を得てからは、活躍の場を東京国際大学に移し、同大学の教授に就任。その後、1999年には副学長、2000年には学長に就任するなど、教育機関の運営にも深く携わりました。2002年からは学校法人金子教育団の常務理事も務め、2009年に同法人を退職しています。

主な著書

岡本氏は、専門分野に関する多くの重要な著作を発表しています。代表的なものとしては、日本の原価計算研究に大きな影響を与えた『米国標準原価計算発達史』（白桃書房、1969年）や、長年にわたり版を重ねたロングセラーである『原価計算』（国元書房、1973年初版、2000年六訂版）が挙げられます。その他にも、『原価計算基準の研究』、『管理会計の基礎知識』（いずれも編著）など、教育や実務に役立つ多数の書籍を執筆または編纂しています。共著や分担執筆、学術論文も数多く発表しており、その研究活動は多岐にわたります。これらの著作は、日本の原価計算・管理会計教育および実務の発展に不可欠な貢献を果たしました。

岡本清氏の生涯は、会計学者として教育、研究、そして学術機関の運営に尽力し、日本の会計学界に多大な足跡を残したものであり、その功績は現在も高く評価されています。

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