岡村天満宮

岡村天満宮：歴史と文化が息づく横浜の天満宮

岡村天満宮は、神奈川県横浜市磯子区岡村に鎮座する由緒ある天満宮です。その歴史は鎌倉時代まで遡り、伝承によると、荏柄天神社を信仰していた武士が岡村に移住した際に、京都北野天満宮から分霊を勧請して創建されたとされています。室町時代には竜珠院が別当を務めていましたが、同寺の宗派変更に伴い、創建当時の詳細な記録は失われてしまいました。

天保初期の記録によると、社地は一畝五分とされており、安政年間には鷹取山の石を使った石段坂が完成しました。明治維新の神仏分離令により無社格の神社となりますが、明治6年には村社に列せられました。磯子、大岡、堀ノ内町などから参道が通じていましたが、堀割川の開削後、関内方面からの参拝者は天神橋付近からの参道を多く利用するようになりました。横浜市電の開通後は、天神祭の際には天神橋と根岸橋の間に仮停留所が設置されるなど、地域の人々の生活に密着した存在でした。

明治19年には、花街を中心とした天神講が設立され、多くの女性参拝客が訪れるようになり、「色天神」と呼ばれるようになりました。明治21年には一の鳥居と石灯籠が建立され、明治37年には撫牛が奉納されました。日露戦争の戦勝記念として、明治39年には二の鳥居が建立されました。明治43年には、近隣の杉山神社と統合され、「杉山天満宮」となり、菅原道真に加え、天照大神と市杵島姫も祭神として祀られるようになりました。この統合後、伊勢佐木町の商店や料亭、魚河岸で働く人々を中心に信者が増加し、天神詣りはさらに賑わいを増しました。大正6年には歌舞伎役者の市川荒次郎が石灯籠を寄進するなど、盛況を極めました。参拝客増加に対応するため、大正11年には社殿改築と境内拡張が行われ、大正12年には神楽殿が再建されました。しかし、関東大震災では一の鳥居や神楽殿が倒壊、社殿も被害を受けましたが、その後修復されました。昭和初期には参道に数軒の茶店が立ち並び、地域の賑わいを象徴する存在でした。

昭和5年には、現在の名称である「岡村天満宮」に改称されました。この頃、岡村公園のテニスコート付近に新たな社殿を建設し、鶴岡八幡宮に匹敵する規模の神社にする計画も持ち上がりましたが、不景気や日中戦争などの影響で実現には至りませんでした。第二次世界大戦後は、戦前ほどの賑わいはありませんでしたが、学業成就や合格祈願の参拝客は多く訪れています。

境内と地域との繋がり

岡村天満宮の境内には、針塚や筆塚の碑、石の撫牛などがあります。また、当地は梅の景勝地としても知られており、境内に梅の木が植えられている他、隣接する岡村公園にも梅林があります。岡村天満宮は、フォークデュオ「ゆず」のメンバーの出身地である岡村と深く関わっており、横浜松坂屋屋上にあったゆずの壁画は、同百貨店の閉店後、岡村天満宮の境内に移設されています。ゆずの岩沢厚治さんは、境内にある岡村幼児園の出身です。

西瓜天神：岡村天満宮の郷土人形

西瓜天神は、岡村天満宮で作られている郷土人形です。大正末期に、蒔田在住の人形師村沢春吉が試作した陶器製の人形が、信仰の対象として授与されるようになりましたが、戦争により途絶えました。戦後、粗悪な模造品が出回る中、戦前の正規品は残っておらず、復活が困難な状態が続きました。しかし、民家の神棚から戦前の西瓜天神が見つかり、陶器店の手によって再び作られるようになりました。その後、後継者難などにより製作が中断された時期もありましたが、1990年頃より宮司と人形職人の協力によって復活し、毎年1月23日の初天神祭で販売されています。

交通アクセス

横浜市営バス「天神前」バス停より徒歩5分です。

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