岡村正

岡村 正：日本の経済界を牽引した経営者

岡村正氏は、1938年生まれの日本の経営者、財界人です。東芝名誉顧問、日本商工会議所名誉会頭、NPO法人日本防災士機構評議員など、数々の要職を歴任しました。父は陸軍大佐で孫子研究家の岡村誠之氏、兄は元警視庁副総監の岡村健氏という、著名な人物を兄弟に持つ家系に生まれ育ちました。

華麗なる経歴：東大から東芝へ

東京都立戸山高等学校卒業後、東京大学に進学。在学中はラグビー部に所属し、斎藤眞ゼミに籍を置いていました。1962年に東京大学法学部を卒業すると、東京芝浦電気（現・東芝）に入社。その後、1973年にはウィスコンシン大学で経営学修士号を取得し、経営手腕を磨きました。

東芝では、1994年に取締役（情報処理・制御システム事業本部長）、1996年には常務取締役と、着実にキャリアを積んでいきます。そして2000年6月、東芝社長に就任。就任後は、肥大化し脆弱になった東芝グループの抜本的な事業再編に着手。グループ全体の経営体質強化に大きな貢献を果たしました。

社長在任中には、2003年にデジタルコンテンツ協会会長に就任。2005年7月には東芝会長に就任すると同時に、日本経済団体連合会（日本経団連）副会長も務めました。2007年11月からは2013年11月まで、日本商工会議所の第18代会頭として、日本の経済界を代表する立場にありました。

財界の重鎮としての活動

日本商工会議所会頭退任後も、その活動は衰えることなく、財界、そして公的機関での社会貢献活動に積極的に参加し続けました。2015年には春の叙勲で旭日大綬章を受章。同年6月には公益財団法人日本ラグビーフットボール協会会長に就任し、2019年6月には名誉会長に就任しました。2016年には東芝名誉顧問に就任し、長年にわたる東芝への貢献が認められました。

発言と公的活動：時代の転換点における発言

岡村氏は、数々の重要な発言でも注目を集めました。2008年9月、福田康夫首相の突然の辞任表明に対しては、強い懸念を示し、国民への責任を問う発言をしました。また、同年3月には、日本銀行総裁人事問題において、与野党の対立を批判。国民目線での政策決定を強く訴えました。

さらに、2008年2月には伊勢神宮の遷宮に対する「式年遷宮奉賛会」の会長に就任するなど、経済界のみならず、社会貢献活動にも広く携わっていました。各地の企業や研究施設の視察、講演活動なども精力的に行い、日本の経済発展に貢献しました。

ラグビーと経営：独自の経営哲学

岡村氏は、ラグビー選手としての経験から、勝利によって初めて真のチームワークが完成するという哲学を確立しました。そして、この哲学を企業経営にも反映させています。東芝社長在任中も、積極的に各事業所を訪問し、現場の状況把握や社員との対話を重視しました。

また、後継者選びにおいては、パソコン部門の成功者である西田厚聰氏を推薦する一方で、社内の指名委員会による決定という、アメリカ的な透明性のある人事制度導入を進めました。これは、岡村氏の経営における透明性への強いこだわりを示しています。

アムウェイとの決裂：マルチ商法への不信感

2001年には、東芝の家電機器部門が日本アムウェイとOEM供給契約を結び、「戦略的提携」と発表しようとした際、岡村氏は社長としてこれに強い不快感を示し、発表の取り消し、そしてOEM供給自体も縮小させました。これは、岡村氏がアムウェイのマルチ商法（連鎖販売取引）に対して根深い不信感を持っていたためです。

岡村正氏の生涯は、日本の経済界における激動の時代を生き抜き、数々の功績を残した稀有な経営者の軌跡を示すものです。その功績は、日本の経済史に深く刻まれています。

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