岡田善政

岡田善政：美濃国を治めた名奉行

岡田善政（おかだ よしまさ）は、1605年（慶長10年）に生まれ、1677年7月1日（延宝5年6月2日）に没した江戸時代初期の旗本です。美濃国代官（美濃郡代）として、また勘定奉行として、その治績は高く評価されています。官位は豊前守。

生い立ちと家系

善政は、祖父に岡田重善、父に岡田善同を持つ武家の家に生まれました。母は朝鮮出身の女性であるという説も存在します。正室には佐久間勝之の娘を迎え、子には岡田善房、岡田善次、岡田重治、堀利安、岡田重元、岡田善紀らがいます。父の善同と共に岡田将監を名乗りました。

美濃国代官としての活躍

善政は、1631年（寛永8年）に父・善同の跡を継ぎ、美濃国代官（後に奉行）に就任しました。この役職において、彼は治水事業に力を注ぎました。特に、尾張国の御囲堤築堤の際には、美濃国側の工事を指揮し、その手腕を発揮しました。

当初、陣屋は可児郡徳野（現在の可児市徳野）の旧徳野藩の徳野陣屋を使用していましたが、1650年（慶安3年）の木曽川の洪水による堤防工事のため、交通の便の良い羽栗郡傘町（現在の羽島郡笠松町）に仮陣屋を移しました。これが後の笠松陣屋となります。また、この頃に考案されたのが、治水技術として知られる猿尾堤です。

農民保護と「濃州国法」

善政は、父・善同と同様に、農民保護政策にも力を入れました。彼は美濃国独自の国役普請制度である「濃州国法」を制定、運用しました。この制度は、従来の制度が村々に一定の割合で人足を課していたため、農民に大きな負担となっていた状況を改善するものでした。濃州国法では、普請所への距離によって人足の負担差を認め、さらに人足負担の代わりに工事資材の納入を許可する代人足制を導入しました。これにより、農民の負担は大幅に軽減されたとされています。

幕府勘定奉行として

1660年（万治3年）、善政は幕府勘定奉行に就任し、約10年間その職を務めました。勘定奉行として、幕府財政に関わる重要な役割を担い、その能力を発揮しました。

歌人としての側面

善政は、歌人としても知られており、歌集「満足和歌集」には、彼の歌が収められています。その中には、美濃国を見下ろした際の感慨や、父との思い出、そして故郷への愛着を詠んだ歌があります。例えば、「まさしくたもつといふ年の三年(正保三年)葉月はじめのほど、江戸を出侍り、十六日まごめの峯くだるより、みのゝ國を見おろして、今ぞ心おちゐにける。」という一節から始まる歌は、彼の旅の情景と心情を鮮やかに描写しています。また、「くみてしる都の宿のあはれさは　こゝも大ゐの里のいさら井」という歌からは、都への憧憬と故郷への愛着が感じられます。

岡田善政は、為政者として、また歌人として、多才な人物であったと言えるでしょう。彼の業績は、現代においても高く評価されており、その名は後世に語り継がれています。

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