佐久間勝之

佐久間勝之

佐久間勝之（さくま かつゆき）は、安土桃山時代から江戸時代前期にかけての武将であり、大名です。常陸北条藩主、そして信濃長沼藩の初代藩主として知られています。

生涯

永禄11年（1568年）、織田氏の家臣であった佐久間盛次の四男として生を受けました。

天正10年（1582年）、信濃国高遠城攻めで初陣を飾り、その名を上げました。当初は叔父である柴田勝家の養子となりましたが、後に佐々成政の娘を娶り、婿養子となります。ただし、『寛永諸家系図伝』（第六）には、佐々成政の養子であり、柴田勝家の婿であったと記録されています。

天正12年（1584年）の末森城の戦いなどで活躍しましたが、天正13年（1585年）に佐々成政が羽柴秀吉（豊臣秀吉）に降伏すると、妻と離縁し、兄である安政（後の信濃飯山藩主）と共に、関東の後北条氏に仕えました。しかし、5年後、豊臣氏によって北条氏が滅ぼされると、しばらく潜伏。その後、遠縁にあたる奥山盛昭を通じて秀吉に召し出され、蒲生氏郷への付属を命じられました。

その後、兄と共に佐久間姓に復し、奥州仕置によって会津を領することになった氏郷に仕え、手ノ子の城（現在の山形県西置賜郡飯豊町手ノ子）を預かりました。『佐久間軍記』によれば、葛西大崎一揆の鎮圧で大きな功績を挙げ、その最中に伊達政宗が氏郷を酒席に招き暗殺しようとした際、これを察知した勝之が氏郷を逃がしたと伝えられています。

氏郷の死後、秀吉に呼び返され伏見城で秀吉に仕え、信濃国長沼城を賜ったとされていますが、実際には発令されなかったようです。慶長3年（1598年）に秀吉が亡くなると、五奉行が徳川家康に伺いを立て、長沼の代わりに近江国山路（現在の滋賀県東近江市山路町）に3,000石を与えられました。

慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いでは東軍に属し、慶長12年（1607年）に江戸城内に居を移しました。その際、常陸国北条（現在の茨城県つくば市北条）に3,000石を加増され、合計1万石を領し、大名となりました。

慶長20年（1615年）の大坂夏の陣では、豊臣方の将である竹田永翁らを討ち取るという手柄を挙げたとされ、その戦功により信濃国水内郡（現在の長野県長野市の東北部、上水内郡飯綱町・信濃町の一部）の内と近江国高嶋郡（現在の滋賀県高島市）の内に加増され、改めて長沼城を賜り、信濃長沼藩1万8,000石の藩祖となりました。

寛永5年（1628年）、長く失われていた京都南禅寺の三門が、藤堂高虎の寄進によって再建されました。この落慶を記念し、勝之によって黄金と共に大灯篭が一灯寄進されました。佐久間玄蕃の片灯篭と言われる灯篭は高さ6メートル余り、銘は南禅寺金地院所縁の以心崇伝によるものとされています。

愛知県名古屋市の熱田神宮の伝によれば、寛永7年（1630年）5月、勝之は海難に遭いましたが、尾張熱田神宮の加護により一命を助けられました。これに感謝した勝之は同社に大灯篭を一灯寄進しました。高さは約8メートルです。

上野東照宮にある通称「お化け灯籠」は、勝之が寛永8年（1631年）に奉納したものであり、高さは6.06メートルあります。

これらの京都南禅寺、名古屋熱田神宮、江戸上野東照宮の大灯籠を合わせて「日本三大灯籠」と呼び、全て勝之の寄進によるものです。

寛永11年（1634年）、駿府城加番役を命じられ、在勤中の同年、67歳で亡くなりました。駿府顕光院に葬られ、戒名は初め瓘岩成璨勝之院。後に子孫が江戸二本榎広岳院に墓所を移した際に泰山正安玉鳳院と改めたと言われています。現在、顕光院には勝之の墓塔と推定されている五輪塔があり、平成16年には位牌が新調されています。近江高島領の菩提寺である幡岳寺（滋賀県高島市）の過去帳には、諱が勝正と記されています。ちなみに広岳院に墓は現存していません。

人物

茶の湯を古田織部に学んだ茶人でもありました（茶人系譜）。

関連作品

吉原実：小説「二口（ふたふり）の左文字」（『北國文華』77号、2018年秋号）
吉原実：小説「炎の城」（『北國文華』89号、2021年秋号）
吉原実：小説「彼岸花」（『北國文華』１００号、２０２４年夏号）

参考文献

いいづな歴史ふれあい館特別展図録『飯綱の地をひらいた“殿様”‐佐久間兄弟と長沼藩・飯山藩』2015年

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