岡田美知代

岡田美知代（おかだみちよ）

岡田美知代（1885年4月15日 - 1968年 1月19日）は、明治時代から昭和時代にかけて活躍した日本の小説家、雑誌記者です。彼女は、田山花袋の自然主義小説『蒲団』のヒロイン、横山芳子のモデルとして広く知られています。

生涯

岡田美知代は、1885年（明治18年）に広島県甲奴郡上下町（現在の府中市上下町）で、備後銀行の頭取を務めた岡田胖十郎の長女として生まれました。兄に第一高等学校や明治大学で教鞭をとった岡田實麿がいます。妹の萬寿代は、北海道帝国大学教授で庄原市長を務めた八谷正義に嫁ぎました。彼女の家はクリスチャンの家庭でした。

1898年（明治31年）9月、神戸女学院に入学。同時期に佐々城信子も在籍しており、面識がありました。1901年（明治34年）に日本組合基督教会神戸教会で洗礼を受けます。博文館の雑誌「中学世界」に和歌や短文を投稿するなど、文学への志を深め、1904年（明治37年）2月に神戸女学院を退学して上京しました。

上京後、田山花袋に入門し、同年4月には女子英学塾（現在の津田塾大学）予科に入学します。1905年（明治38年）5月、中山泰昌の紹介で永代静雄と文通を始め、7月には関西学院で開かれたYMCA夏期学校に静雄から誘いを受けて参加し、初めて対面しました。上京の際、静雄と京都で会い、膳所を観光するなどして親密な関係になります。しかし、静雄との関係が花袋に知られ、実家に報告されたため帰郷することになります。同年9月に『蒲団』が発表され、スキャンダルの渦中に巻き込まれ、「新潮」に横山よし子の名義で「『蒲団』について」を発表しました。

1908年（明治41年）に再び上京し、兄・實麿の家に住みます。同年9月に静雄との間の子を妊娠したことが判明したため、中山泰昌の手配で千葉県本納町に身を隠します。その後、牛込区原町に新居を構え、長女千鶴子をもうけました。1909年（明治42年）1月、田山家の養女として永代静雄と結婚し、永代美知代の名義で『少女世界』などに小説を発表するようになります。

同年11月、いったん静雄と別れ、千鶴子を連れて田山家に戻ります。その後、同門の水野仙子と初台で同居。翌年4月には再び静雄とともに富山市へ移り、いくつかの短編を雑誌に発表しました。花袋の『妻』、『縁』にも登場します。『スバル』に寄せた「ある女の手紙」は、花袋への意趣返しとも言える美知代の作品です。1911年（明治44年）3月には長男太刀男を出産。同年6月に千鶴子が脳膜炎で亡くなったため、夫婦で別府温泉に旅行に行き、学生時代の田中純と出会いました。1912年（大正元年）頃から神近市子と親交を結び、『少女世界』をはじめとした少女向け雑誌に少女小説や童話を多く執筆しました。夫婦仲は良好とは言えず、読売新聞にゴシップ記事が掲載されたり、『備後の山中』を発表した花袋と再び険悪になったりしました。

1917年（大正6年）に初めて永代家の籍に入ります。1923年（大正12年）には、ストウ夫人の『アンクル・トムの小屋』を初めて日本語に完訳した『奴隷トム』を出版しました。

1926年（大正15年）に静雄と離婚し、「主婦之友」の記者として太刀男を連れて渡米します。現地で佐賀県出身の花田小太郎と再婚しますが、太刀男が結核に罹患したため、1927年（昭和2年）に単身帰国し、静雄に引き取られます。太刀男は1932年（昭和7年）に22歳で亡くなりました。両親も亡くなりますが、滞米中だった美知代は最期に立ち会うことができませんでした。1941年（昭和16年）に第二次世界大戦の影響で花田とともに帰国し、親族のいた広島市観音町や、妹の萬寿代の嫁ぎ先である庄原市に住みました。晩年は英語を学びながら、花袋についての回顧録を執筆し続けました。1968年（昭和43年）、老衰のため83歳で死去しました。

岡田美知代の生家は、現在、上下歴史文化資料館として公開されています。

主な発表作品（永代美知代名義）

1908年（明治41年）4月：「老嬢」文章世界
1910年（明治43年）9月：「ある女の手紙」スバル
同年10月：「里子」スバル
同年12月：「一銭銅貨」中央公論
同月：「岡澤の家」ホトトギス
1911年（明治44年）4月：「清のぐるり」ホトトギス
1913年（大正2年）9月：「冷い顔」婦人評論
1914年（大正3年）1月：「郷里のをんな」婦人評論
同年6月：「蛙鳴く声」新小説
1915年（大正4年）12月：「秋立つ頃」希望
1958年（昭和33年）7月：「花袋の「蒲団」と私」婦人朝日（『日本文学研究資料叢書自然主義文学』に所収）

参考文献

『「蒲団」をめぐる書簡集』（田山花袋記念館研究叢書第二巻、館林市）

外部リンク

広島の女性作家岡田(永代)美知代 - 広島大学

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