甲奴郡

甲奴郡の歴史と発展

甲奴郡（こうぬぐん）は、かつて広島県（備後国）に存在した行政区画です。その成立は709年11月13日と古く、芦田郡から甲努村が分離されて誕生しました。近年の研究によれば、「甲奴」という名称の由来にはいくつかの説があり、川沿いの土地を意味する「河野」や「河内野」から転じたという説、または傾斜した地形を指す「傾き野」から派生したという説が存在します。古代からこの地域は鉄の生産地として知られ、平安時代にはその鉄が朝廷に献上されることが記録されています。これらの歴史的背景から、甲奴郡は地域経済においても重要な役割を果たしてきました。

近世以降の変遷

甲奴郡は、明治初年の政治的変革に伴い変遷を重ねます。1868年には幕府領が倉敷県の管理下に置かれ、その後1871年には藩領が広島県と中津県の管轄となりました。1878年の郡区町村編制法の施行により、甲奴郡が正式に行政区画として発足し、そこに役所が設置されました。これにより、甲奴郡は世羅郡や三谿郡と共に管轄されることになります。

町村制とその後の発展

1890年代に入ると町村制が施行され、その結果として29村が発足し、地域の構造が確立していきます。その後も合併が繰り返され、1912年には新たに町村が生まれ、大正時代には郡会が廃止されたものの、郡役所は残り、地域のセンター的な役割を果たしました。1926年には郡役所が廃止され、その後は区域名称としての役割を担いました。

戦後の再編

戦後も甲奴郡は変遷を続け、1950年代には町村の合併が進行。1954年には上下町が新設され、その数年後に甲奴村が誕生しました。また、1957年には上下町が周辺地域を編入しました。このように、地域の連携が強まる中で、郡としての機能は徐々に薄れていきます。

甲奴郡の消滅

2004年4月1日、上下町が府中市に編入され、甲奴町も三次市や周辺村と合併し、三次市として再出発することとなりました。こうして、甲奴郡は形を消し、その名は地域史の中に埋もれていきました。最後の大規模な合併は2005年で、総領町が庄原市および他の町と合併した際に、甲奴郡は正式に消滅しました。

結論

甲奴郡は、長い歴史の中で数多くの変遷を経てきた地域ですが、近代的な行政改革の中でその形を失いました。現代においてもその影響は残っており、地域の文化や歴史として人々の記憶に刻まれています。甲奴郡の歴史を学ぶことは、広島県の発展の一端を知る手助けとなります。

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