岡谷繁実

岡谷繁実：幕末維新を駆け抜けた勤王家、その生涯と『名将言行録』

岡谷繁実（おかのや しげざね）は、天保6年（1835年）に生まれ、大正9年（1920年）に没した幕末から明治にかけての人物です。上野館林藩士であり、通称は鈕吾（ちゅうご）。激動の時代を勤王家として奔走し、後世に名を残す著述家でもありました。

生い立ちと幕末の動乱

岡谷は江戸で高島流砲術を学んだ後、水戸に遊学し、昌平黌で儒学を修めました。当時の館林藩主・秋元志朝が長州藩と血縁関係にあったことから、岡谷は尊皇攘夷運動に身を投じることになります。高松実村（高松保実の継嗣）の家老として、偽勅使事件で知られる高松隊にも参加しました。

『名将言行録』の編纂

岡谷繁実の最大の功績は、安政元年（1854年）から明治2年（1869年）にかけて編纂された『名将言行録』です。これは、戦国時代から江戸時代までの192人に及ぶ武将たちのエピソードをまとめたもので、武士道精神やリーダーシップを学ぶための古典として、広く読まれています。彼の死後も増補改訂が重ねられ、今日まで読み継がれています。

明治維新後の活動

維新後、岡谷は新政府に出仕し、岩代国巡察使に随行して会津へ赴任。若松県大参事を務めます。会津松平家の再興を建言しますが、知人の罪に連座して免官となり、広島藩預かりとなりました。その後、水沢県七等出仕として復官し、内務省出仕を経て修史館御用掛となります。退職後は史談会の幹事を務め、歴史研究に尽力しました。

その他の業績

『名将言行録』以外にも、岡谷は『皇朝編年史』を刊行するなど、歴史研究に大きく貢献しました。彼の著作は、当時の社会情勢や人々の価値観を理解する上で貴重な資料となっています。

年譜

1835年（天保6年）：山形城内で生まれる。
1847年（弘化4年）：家督を継ぐ。
1854年（安政元年）：『名将言行録』起稿。
1860年（万延元年）：藩の許しなく上京し、朝廷に攘夷を建言。
1861年（文久元年）：無断上京の罪により降格処分を受ける。
1863年（文久3年）：世子秋元礼朝の侍講となる。中老役になり、雄略天皇山陵修復を行う。
1864年（元治元年）：征長回避を周旋。藩命により長州に赴き、幕府の嫌疑を蒙り、禄を奪われ蟄居。
1868年（明治元年）：大坂遷都に反対し、江戸への遷都を建白。高松保実に仕え高松家の家老となる。高松隊を結成し、参謀となる。
1869年（明治2年）：岩代国巡察使に随行して会津へ赴任。若松県大参事に転ずる。会津松平家再興を建言。知人の罪に連座して免官。『名将言行録』初版刊行。
1874年（明治6年）：水沢県七等出仕として復官。
1878年（明治11年）：内務省出仕を経て修史館御用掛に転ずる。
1886年（明治19年）：退職。
1892年（明治25年）：史談会幹事となる。
1900年（明治33年）：『皇朝編年史』刊行。
1911年（明治44年）：続巻を含む『名将言行録』増補版刊行。
1920年（大正9年）：病没。

岡谷繁実は、激動の幕末維新期を生き抜き、勤王家、著述家として多大な功績を残しました。彼の編纂した『名将言行録』は、現代においても、リーダーシップや人間力を高めるための貴重な教材として読み継がれています。

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