岩手県の市町村歌一覧

岩手県の市町村歌

岩手県内の各市町村には、それぞれの地域性を反映した自治体歌やそれに類する楽曲が数多く存在します。これらの歌は、地域のアイデンティティや住民の誇りを象徴するものであり、長年にわたって親しまれてきました。この解説では、現在歌われているものから、市町村合併などを経て歴史の一部となった歌まで、岩手県における市町村歌の様相をご紹介します。

県内における市町村歌の概況

岩手県内の市町村歌は、隣接する宮城県や秋田県と同様に、「市民歌」「町民歌」「村民歌」といった、自治体名を冠した直接的な表題を持つものが多数を占めるという特徴が見られます。特に町村部では歌の制定率が高く、平成の大合併以前から多くの町や村が独自の歌を持っていました。歴史を遡ると、盛岡市、宮古市、釜石市などは戦前から市歌を制定していましたが、現在では釜石市を除いて、その後の市制施行や合併に伴い新たな歌が誕生しています。

現在歌われている主な市町村歌

市部

多くの市で、合併や新たな記念事業を機に新しい市民歌が制定されています。

盛岡市: 1949年に制定された2代目の市歌が現存します。この歌は、IGRいわて銀河鉄道線の盛岡駅に到着する際のメロディとしても使用されており、市民に身近な存在となっています。
宮古市: 新設合併を経て、2007年に合併後初代となる「森・川・海のみやこ」が誕生しました。
大船渡市: 三陸町との合併を記念して、2006年に2代目の市民歌が制定されました。
花巻市: 新設合併後、2007年に新しい市民歌が制定されました。
北上市: 詩人の谷川俊太郎が作詞を手掛けた「きらめいて」が歌われています。
久慈市: 旧久慈市の市民歌（1954年制定）は合併協議会での申し合わせにより失効扱いとなりましたが、合併後、新たな市民歌は制定されていません。
遠野市: 合併後初代となる市民歌があり、シンガーソングライターの船越由佳が作詞・作曲を手掛けています。
一関市: 新設合併を記念して2007年に制定された市民歌（合併後初代）です。
陸前高田市: 1955年から歌い継がれている市民歌です。
釜石市: 1937年制定の市民歌が、県内では最も古い現存の市歌として知られています。この歌は、作詞を広瀬喜志、作曲を古関裕而という著名な顔ぶれが担当しています。
二戸市: 市制10周年を記念し、2015年に市民憲章に曲を付けた「市民憲章」のうたが発表されました。
八幡平市: 合併5周年を記念して、2010年に市民歌が制定されました。
奥州市: 2007年に制定された「奥州市民のうた」は、作詞を千田貴子、作曲をさとう宗幸が手掛けました。
滝沢市: 村制時代に「チャグチャグ馬コの里音楽祭」のテーマソングとして作られた「いいねふるさと」が、市制施行後も市民愛唱歌として親しまれています。毎日正午に防災無線で演奏されるほか、IGRいわて銀河鉄道線の滝沢駅・巣子駅到着メロディとしても使われています。

町村部

多くの町村でも、地域を歌い上げる歌が制定されています。

雫石町: 1970年制定の町民の歌があります。
岩手町: 1956年制定の町民歌があり、IGR岩手川口駅、いわて沼宮内駅、御堂駅の到着メロディとしても使用されています。
西和賀町: 正式な町歌は制定されていませんが、2012年の町民劇場主題歌「きらめきて西和賀の町」があります。
平泉町: 2011年の世界遺産登録を記念して「平泉讃歌」が発表されました。
普代村: 三陸鉄道北リアス線開通を記念した村のイメージソング「おれの北緯四十度」（1984年発表）は、作曲を船村徹が担当しています。
その他、葛巻町、紫波町、矢巾町、金ケ崎町、住田町、大槌町、山田町、岩泉町、田野畑村、軽米町、野田村、九戸村、一戸町にも、それぞれ歴史のある町民歌や村民歌が制定されています。

県内の自治体の中には、洋野町のように、合併後も町歌が未制定となっているケースもあります。

廃止された市町村歌

平成の大合併を中心に、多くの旧市町村歌がその役目を終えました。これらは、合併後の新自治体歌の制定や、自治体そのものの消滅に伴い廃止されたものです。

例としては、旧盛岡市、旧宮古市、旧大船渡市、旧花巻市、旧遠野市、旧一関市の歌のほか、かつて存在した水沢市、江刺市、前沢町、花泉町、大東町、藤沢町、千厩町、室根村、旧滝沢村、旧三陸町、旧山形村などの自治体歌が挙げられます。これらの歌の中には、戦前に制定されたものなど、長い歴史を持つものも含まれていました。

まとめ

岩手県の市町村歌は、地域住民にとって心のよりどころとなり、ふるさとへの愛着を育む大切な文化遺産です。公式な制定歌から愛唱歌、地域イベントに関連するものまで、その形態は多様であり、それぞれの歌に地域の歴史や特色が込められています。公共施設や交通機関での利用などを通じて、今もなお多くの県民に親しまれ、歌い継がれています。時代の変化とともに新しい歌が生まれ、古い歌が歴史となる中で、市町村歌はこれからも岩手の各地で、地域社会の絆を深める役割を果たしていくでしょう。

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