岩本憲児

岩本憲児：日本の映画研究を牽引する巨匠

岩本憲児氏（1943年生まれ）は、日本の映画史研究において第一人者として広く知られています。早稲田大学名誉教授の肩書きを持つ彼は、映画史、映像論を専門とし、長年にわたり日本の映画文化の解明に尽力してきました。

熊本県八代市出身の岩本氏は、飯島正氏に師事し、早稲田大学大学院博士課程を修了。その後、早稲田大学にて助手、専任講師、助教授、教授と着実にキャリアを積み重ねました。2006年には早稲田大学を退職し、日本大学芸術学部教授を経て2014年に退職されました。その間、2002年から2006年にかけては日本映像学会会長を務め、日本の映像文化の発展にも大きく貢献しています。

研究と著作活動

岩本氏の研究は多岐に渡り、日本の映画史、特にサイレント映画からトーキー映画への移行期、時代劇、そして現代映画まで、幅広く網羅しています。また、ロシア・アヴァンギャルド映画やハリウッド映画など、海外の映画についても造詣が深く、国際的な視点を取り入れた研究も行っています。

彼の著作は、その豊富な知識と深い洞察に裏打ちされた、読み応えのある内容で知られています。代表的な著書として、『シネマランド漂流』（早稲田大学出版部）、『ロシア・アヴァンギャルドの映画と演劇』（水声社）、『幻燈の世紀 映画前夜の視覚文化史』（森話社）など、多くの優れた著作を発表しています。

近年発表された著書『日本映画とナショナリズムの時代　娯楽・闘争・プロパガンダ』（森話社）では、日本の映画とナショナリズムの複雑な関係性を多角的に分析しています。また、『黒澤明の映画　喧々囂々　同時代批評を読む』（論創社）では、黒澤明監督の作品を同時代の批評を交えながら深く考察し、新たな視点を提示しています。これらの著作は、日本の映画研究において重要な資料として高く評価されています。

さらに、岩本氏は多くの共編著や監修にも携わっています。例えば、『映画理論集成』（波多野哲朗氏と共編）、『日本映画の歴史 写真・絵画集成』（全3巻、編著）などは、映画研究者にとって必携の書となっています。また、海外の重要な映画理論書を翻訳するなど、日本の映画研究の国際化にも貢献しています。

多角的なアプローチと今後の展望

岩本氏の研究の特徴は、単なる歴史的記述にとどまらず、映画というメディアの文化的・社会的な側面を多角的に考察している点にあります。時代背景や社会構造、そして映画制作に関わった人々の思想や文化などを踏まえながら、映画作品を深く理解しようと試みています。

彼のこれまでの研究活動は、日本の映画研究に大きな影響を与え、後進の育成にも貢献してきました。今後も、日本の映画文化の更なる発展に繋がるような、質の高い研究活動を期待したいところです。

主な著書・共編著・監修

『シネマランド漂流』（早稲田大学出版部）
『ロシア・アヴァンギャルドの映画と演劇』（水声社）
『幻燈の世紀 映画前夜の視覚文化史』（森話社）
『光と影の世紀 映画史の風景』（森話社）
『サイレントからトーキーへ 日本映画形成期の人と文化』（森話社）
『「時代映画」の誕生　講談・小説・剣劇から時代劇へ』（吉川弘文館）
『ユーモア文学と日本映画』（森話社）
『黒澤明の映画　喧々囂々　同時代批評を読む』（論創社）
『日本映画とナショナリズムの時代　娯楽・闘争・プロパガンダ』（森話社）
『映画理論集成』（波多野哲朗共編）
『日本映画の歴史 写真・絵画集成』（全3巻、編著）
その他多数

翻訳

ピーター・ウォーレン『映画における記号と意味』
ダニエル・アリホン『映画の文法 実作品にみる撮影と編集の技法』
フェデリコ・フェリーニ『私は映画だ 夢と回想』
その他多数

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