岩瀬成子

岩瀬成子（いわせ じょうこ）

岩瀬成子（1950年8月25日 - ）は、日本の児童文学作家。山口県玖珂郡玖珂町（現：岩国市）出身。現在も岩国市に在住し、創作活動を続けています。

経歴

山口県立岩国商業高等学校を卒業後、公務員として社会人生活をスタートさせました。転機となったのは、児童文学作家・今江祥智の講演を聞いたことでした。これをきっかけに、京都の聖母女学院短期大学で児童文学を学び始めます。1975年に岩国へ帰郷し、1977年に岩国市内の喫茶店「ほびっと」をモデルにした作品で作家デビューを果たしました。

作風と受賞歴

岩瀬成子の作品は、周囲の人々との関係に悩みながらも自己を探求していく子どもの姿を、繊細かつ丁寧に描いている点が特徴です。彼女の作品には、子どもたちが抱える心の葛藤や成長の過程が、リアリティをもって表現されており、読者の心を深く揺さぶります。

数々の賞を受賞しており、1978年には『朝はだんだん見えてくる』で日本児童文学者協会新人賞を受賞しました。その後も、『「うそじゃないよ」と谷川くんはいった』で産経児童出版文化賞、小学館文学賞、IBBYオナーリスト賞、『ステゴザウルス』『迷い鳥とぶ』で路傍の石文学賞、2008年には『そのぬくもりはきえない』で日本児童文学者協会賞、2014年には『あたらしい子がきて』で野間児童文芸賞、JBBY賞、IBBYオナーリスト賞、2015年には『きみは知らないほうがいい』で産経児童出版文化賞大賞、2021年には『もうひとつの曲がり角』で坪田譲治文学賞、2022年には『わたしのあのこあのこのわたし』で児童福祉文化賞を受賞するなど、その功績は高く評価されています。

主な著書

岩瀬成子の著作は多岐にわたります。以下に代表的な作品を挙げます。

『朝はだんだん見えてくる』（理論社、1977年）
『わたしねこ』（理論社、1979年）
『小さな獣たちの冬』（小学館、1980年）
『アトリエの馬』（学校図書、1981年）
『額の中の街』（理論社、1984年）
『あたしをさがして』（理論社、1987年）
『ポケットのなかの<エーエン>』（理論社、1988年）
『日曜日の手品師』（教育画劇、1989年）
『「うそじゃないよ」と谷川くんはいった』（PHP研究所、1991年）
『アイスクリーム・ドリーム』（理論社、1991年）
『もうちょっとだけ子どもでいよう』（理論社、1992年）
『子どもたちの森』（あかね書房、1993年）
『迷い鳥とぶ』（理論社、1994年）
『ステゴザウルス』（マガジンハウス、1994年）
『イタチ帽子』（文渓堂、1995年）
『どうぶつふうせん』（ほるぷ出版、1996年）
『やわらかい扉』（ベネッセコーポレーション、1996年）
『アルマジロのしっぽ』（あかね書房、1997年）
『夜くる鳥』（PHP研究所、1997年）
『大きい家 小さい足』（理論社、1997年）
『金色の象』（偕成社、2001年）
『二十歳だった頃』（晶文社、2002年）
『さらわれる』（BL出版、2002年）
『月夜の誕生日』（金の星社、2004年）
『となりのこども』（理論社、2004年）
『かくれんぼ』（福音館書店、2005年）
『小さな小さな海』（理論社、2005年）
『そのぬくもりはきえない』（偕成社、2007年）
『「さやか」ぼくはさけんだ』（佼成出版社、2007年）
『だれかないてる』（佼成出版社、2008年）
『白雪姫』（フェリシモ、2008年）
『ねずみじょうど』（フェリシモ、2008年）
『オール・マイ・ラヴィング』（ホーム社、2010年）
『まつりちゃん』（理論社、2010年）
『だれにもいえない』（毎日新聞社、2011年）
『ピース・ヴィレッジ』（偕成社、2011年）
『なみだひっこんでろ』（岩崎書店、2012年）
『とっとこトマちゃん』（WAVE出版、2013年）
『あたらしい子がきて』（岩崎書店、2014年）
『くもりときどき晴レル』（理論社、2014年）
『きみは知らないほうがいい』（文研出版、2014年）
『ともだちってだれのこと』（佼成出版、2015年）
『ぼくが弟にしたこと』（理論社、2015年）
『マルの背中』（講談社、2016年）
『ちょっとおんぶ』（講談社、2017年）
『春くんのいる家』（文渓堂、2017年）
『ともだちのときちゃん』（フレーベル館、2017年）
『地図を広げて』（偕成社、2018年）
『もうひとつの曲り角』（講談社、2019年）
『おとうさんのかお』（佼成出版、2020年）
『ネムノキをきらないで』（文研出版、2020年）
『わたしのあのこあのこのわたし』（PHP研究所、2021年）
『ひみつの犬』（岩崎書店、2022年）
『ジャングルジム』（ゴブリン書房、2022年）
『ひとりかもしれない』（フレーベル館、2023年）
『真昼のユウレイたち』（偕成社、2023年）
『ぼくのねこポー』（PHP研究所、2024年）
『まだら模様の日々』（かもがわ出版、2024年）

『朝はだんだん見えてくる』について

岩瀬成子のデビュー作であり、1977年に理論社から刊行されました。1978年には日本児童文学者協会新人賞を受賞し、作者の代表作の一つとして知られています。長新太がイラストを担当し、1980年には劇団民藝によって舞台化もされています。2005年には新版が刊行されています。

この物語は、米軍基地のある町を舞台に、中学3年生の奈々が夏休みから2学期の終わりまでの間に経験する成長と自己探求を描いています。ジャズ喫茶で知り合った少年との出会いや、反戦喫茶への出入り、基地反対デモへの参加などを通して、奈々は親や教師といった大人たちとのギャップに苦しみながらも、自分らしい生き方を模索していきます。

作中に登場する反戦喫茶は、1972年頃にベ平連の活動家が経営していた実在の喫茶店「ほびっと」がモデルとなっています。岩瀬自身もこの喫茶店に出入りしていた経験から、この作品が生まれたと言われています。

岩瀬成子の作品は、子どもたちの心の機微を丁寧に捉え、読者に深い感動を与え続けています。彼女の作品は、時代を超えて読み継がれるべき、児童文学の傑作と言えるでしょう。

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