岩田文昭

岩田 文昭

宗教学および哲学を専門とする日本の研究者で、大阪教育大学において教授を務めている。1958年、愛知県名古屋市に生を受けた。広範な学問分野に跨る探究を通じて、現代における精神や存在の意義を問い続けている。

経歴

岩田文昭氏は1958年に名古屋の地で誕生した。高校は東海高等学校に進学し、1977年に卒業。その後、京都大学に進み、文学部の哲学科で哲学の基礎を修めた。1982年に同学部を卒業後、さらに深く学問を追求するため、京都大学大学院文学研究科の宗教学専攻に進んだ。1986年には修士課程を修了。この間、さらなる視野を広げるべくフランスへ渡り、ルーヴァン大学の高等哲学研究所でも研鑽を積んだ経験を持つ。1990年には京都大学大学院文学研究科宗教学専攻の博士後期課程において、単位取得の上で満期退学に至った。

研究者としての道を歩み始めたのは、1994年に大阪教育大学の講師に着任したことによる。大学での教育・研究活動を続け、1996年には助教授に昇格した。学術的な業績を着実に積み重ね、2000年には京都大学に学位論文『フランス・スピリチュアリスムの宗教哲学』を提出し、文学博士の学位を取得している。そして、2004年には大阪教育大学教育学研究科の教授に就任し、現在に至るまで教育・研究の第一線で活躍している。

研究内容と業績

岩田氏の研究の中心にあるのはフランス・スピリチュアリズムである。この思想潮流における主要な哲学者たち、特にアンリ・ベルクソン、メーヌ・ド・ビラン、モーリス・ブロンデルの思想を深く掘り下げ、その宗教哲学的な意義を解明している。これらの研究は、氏の博士論文のテーマにも結実しており、その学術的基盤となっている。

フランス哲学のみならず、広範な知識人の宗教観についても精力的に研究を展開している。フランスのアンリ・ベルクソンの思想における宗教的な側面や、日本の近代仏教思想家である近角常観といった人物の宗教観についても詳細な分析を行っている。これにより、思想家たちの内面における信仰や精神性のあり方を明らかにしている。

また、近代日本の哲学史にも深い関心を持ち、京都学派と呼ばれる哲学者たちの思想についても研究を進めている。西田幾多郎、九鬼周造、西谷啓治といった代表的な哲学者の著作や思想を分析し、その独自性や日本思想における位置づけを考察している。

近年は、「いのち」の教育というテーマにも積極的に取り組んでいる。これは、単なる生物学的な生命にとどまらず、人間存在の根源に関わるスピリチュアリティや精神性を含んだ「いのち」の理解を教育の場でどのように深めていくべきかを探求するものである。教育と宗教・哲学を結びつける視点から、現代社会における倫理や価値観の課題にも向き合っている。

著作活動

岩田氏は、専門分野に関する多くの研究成果を単著として発表しているほか、国内外の研究者との共同作業による編著や共編著も多数手がけている。学術的な論文に加え、一般向けの啓蒙書や、古典の編纂・解説にも携わっている。

主な共編著としては、カール・ベッカー氏との共同編集による『いのち 教育 スピリチュアリティ』（大正大学出版会、2009年）がある。この書籍は、教育現場における「いのち」やスピリチュアリティを巡る議論に新たな視点を提供するものである。また、クリス・ハーディング氏、吉永進一氏との共編著として、近現代日本における宗教と心理療法の関係を論じた英文書籍『Religion and Psychotherapy in Modern Japan』（Routledge、2015年）を国際的に発表している。

さらに、近年では文芸作品にも関心を広げ、2024年に岩波文庫より刊行された『嘉村礒多集』では、編纂と解説を担当している。これは、文学研究者としての氏の幅広い関心を示すものと言える。

その他

岩田氏は、所属する大阪教育大学社会科教育講座の哲学研究室のウェブサイトや、自身の研究者プロフィール、あるいはX（旧Twitter）アカウントなどを通じて、自身の研究活動や考えについて積極的に情報発信を行っている。

もう一度検索