岩田暁美

岩田暁美（いわた あけみ）は、日本のプロ野球界で個性的な存在感を放った女性記者です。1961年8月5日に神奈川県横浜市で生まれ、東海大学教養学部芸術学科（ヴィオラ専攻）を卒業。2003年7月24日に41歳の若さでこの世を去りました。

野球との出会いと初期のキャリア

少年時代、熱心な大洋ホエールズファンの母親に連れられて川崎球場を訪れたことが、岩田氏の野球への情熱の原点となりました。この経験から、彼女自身も大洋ファンとなり、一時期は連日球場に通うほどの熱狂ぶりでした。高校生の頃には、1978年にオープンしたばかりの横浜スタジアムで、初代のマスコットガールを務めるという貴重な経験も積んでいます。

大学在学中の1年生からは、早くも野球関連のメディアで活動を開始。ラジオたんぱやRFラジオ日本で、ベンチリポーターとして現場の声を届ける役割を担いました。大学卒業後も、RFラジオ日本の契約リポーターとして、プロ野球取材の最前線に立ち続けました。

「長嶋番」記者としての活躍

プロ野球記者として、福岡ダイエーホークスやヤクルトスワローズなど、複数の球団担当を経て、1994年の日本シリーズからは、読売ジャイアンツの監督を務めていた長嶋茂雄氏に密着する「長嶋番」記者として、その名を広く知られるようになりました。長嶋監督の一挙手一投足を追いかける密着取材は、彼女のキャリアにおける大きな柱となります。

ソバージュパーマの長い髪と、日焼けした健康的な顔立ちという独特の風貌は、多くの人々の印象に残りました。その個性的な取材スタイルやキャラクターは、ものまねタレントのノブ&フッキーがネタとして披露するほど、人気を集めました。

新しい挑戦と多方面での活動

岩田氏は、プロ野球中継においても新たな道を切り拓きました。2002年5月には、AMラジオのプロ野球中継で女性として初めて実況を担当するという、歴史的な役割を果たしました。ある試合では、自らが前半に実況を務め、後半はベンチリポートを担当するという、ラジオ中継としては異例のアナウンサーリレーも経験しています（この際、後半で実況を担当したのはRFラジオ日本アナウンサーの染谷恵二氏でした）。

また、プロ野球取材だけでなく、正月の風物詩である東京箱根間往復大学駅伝競走（箱根駅伝）の記者としても取材活動を行いました。さらに、『東京スポーツ』紙面では、プロ野球に関する読み物やコラムを定期的に寄稿するなど、多才ぶりを発揮しました。

長嶋番として培った経験は、『岩田暁美のとなりのチョーさん 密着2162日、素顔の長嶋監督』（2000年11月、小学館）という著書としてもまとめられ、出版されています。

病との闘い、そして突然の死

2003年2月、岩田氏は子宮癌を患い、入退院を繰り返す厳しい闘病生活に入ります。同年3月には、長年活動の拠点としてきたRFラジオ日本との契約が終了となりました。病床にあっても、仕事への復帰を強く願い、巨人戦のスコアシートをつけるなど、精力的に活動再開を目指していました。

しかし、病状は回復せず、2003年7月24日、東京都港区の病院で心不全のため、惜しまれつつも急逝しました。RFラジオ日本での最後の仕事となったのは、亡くなる年の1月に行われた箱根駅伝の中継におけるリポーター業務でした。

岩田氏の訃報を受け、RFラジオ日本では死去当日、午後7時から約20分間、彼女を追悼する緊急特別番組が生放送されました。番組には、同局のスポーツ中継で長年実況を務めた内藤博之氏（司会進行）や、野球解説者の広岡達朗氏らが出演し、故人の功績と人柄を偲びました。

主な活動

ラジオ番組: 『ラジオ日本ジャイアンツナイター』、『東京箱根間往復大学駅伝競走実況中継』、『青田昇と高山栄のジャジャ馬直球勝負』、『青田昇と高山栄のスポーツアイランド』、『廣岡達朗と高山栄のスポーツアイランド』など
新聞: 『東京スポーツ』（コラム寄稿）
* 著書: 『岩田暁美のとなりのチョーさん 密着2162日、素顔の長嶋監督』

もう一度検索