岩鼻陣屋

岩鼻陣屋について

岩鼻陣屋は、江戸時代に上野国群馬郡岩鼻村（現在の群馬県高崎市岩鼻町）に存在した幕府直轄の代官所です。この陣屋は、天領を治める代官が常駐し、年貢の徴収や訴訟の処理など、幕府の支配を円滑に行うための拠点としての役割を担いました。

設立の背景

岩鼻陣屋が設置された背景には、寛政の改革があります。この改革は、天明の浅間山噴火や天明の大飢饉によって荒廃した農村の復興を目的としていました。幕府は、全国の直轄領に代官を派遣し、その地域の実情を把握し、農村の立て直しを図りました。岩鼻陣屋も、この政策の一環として設立されました。同時に、吹上陣屋、藤岡陣屋、真岡陣屋、上郷出張陣屋なども設置され、各地域の復興が目指されました。

陣屋の建設と機能

寛政5年（1793年）1月23日、上野国の幕府直轄領を管轄していた代官の佐藤友五郎から、後任として吉川栄左衛門と近藤和四郎が任命されることが各村々に通達されました。2月6日には、吉川の手付が建設予定地を調査し、倉賀野城跡などの候補地の中から岩鼻村が選ばれました。2月22日には、村の代表者を集めて岩鼻村に陣屋を建設することが正式に発表されました。建設工事は同年6月に完了し、7月1日から業務が開始されました。両代官が支配する地域は、上野国の群馬、甘楽、勢多、利根、山田、新田、佐位、緑野の各郡に点在しており、合計5万8700石にも及びました。

戊辰戦争とその後

慶応4年（1868年）3月、戊辰戦争の際に東山道総督府が高崎城に入り、岩鼻陣屋の役人たちは江戸へ引き上げ、陣屋は無人となりました。陣屋の書類などは、村役人を通じて新政府軍に引き渡されました。そして、同年6月17日には、岩鼻県が設置され、岩鼻陣屋跡には県庁が置かれることになりました。初代知県事には、彦根藩士の大音龍太郎が任命されました。

岩鼻陣屋は、江戸時代後期の農村復興政策を象徴する施設であり、その後の近代化への移行期において、重要な役割を果たしました。現在、その建物は残っていませんが、その歴史は、地域の歴史を語る上で欠かせないものとなっています。

参考資料

群馬県史編さん委員会 編『群馬県史』 通史編4 近世1、群馬県、1990年8月30日。
渋川市市誌編さん委員会 編『渋川市誌』 2巻、渋川市、1993年3月31日。
高崎市市史編さん委員会 編『新編 高崎市史』 通史編3　近世、高崎市、2004年3月31日。

関連項目

伊香保神社掲額事件

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