岸昌

岸 昌

岸 昌（きし さかえ）は、1922年1月22日に大阪府で生まれ、2011年1月21日に88歳でその生涯を閉じた日本の官僚であり、後に大阪府知事を務めた人物です。没後、従三位の位階が追叙されました。

東京帝国大学を1943年に卒業後、同年には海軍主計科短期現役第10期として海軍経理学校に入校。卒業後の1943年には厚生省に入省し、保険局に配属されました。官僚としてのキャリアは多岐にわたり、自治省行政課長、自治大学校長などを歴任しました。

特に注目されるのは、1968年に初代の日本政府沖縄事務所長を務めたことです。この任期中に、彼は外務大臣宛ての公電において、沖縄の人々の心情に寄り添うこと、本土と沖縄との対話を深めること、沖縄を「第二の琉球処分」と批判されないように配慮すること、そして沖縄を政治的・財政的な負担としてのみ捉えないことなどを提言しています。これは、本土復帰を控えた沖縄との関係構築における彼の姿勢を示す重要なエピソードです。その後、1970年には自治省官房長に就任しました。

1971年、岸昌氏は当時の黒田了一大阪府知事のもとで大阪府副知事に就任し、地方自治体の運営に深く関わることになります。また、日本赤十字社大阪府支部副支社長も兼任しました。

そして1979年、大阪府知事選挙に立候補し、現職であった黒田氏を破って初当選を果たしました。大阪府知事としては3期12年にわたり府政を主導しました。この期間には、大阪府内を放送区域とするテレビ大阪の開局や、関西国際空港の建設など、多くの大規模な公共事業を積極的に推進しました。また、2府4県による広域連携を目指す「近畿圏構想」を提唱するなど、大阪を中心とした地域の発展に力を注ぎました。

岸昌氏はそのキャリアを通じて、自身の思想や信条を隠さず公言する姿勢でも知られました。特に知事就任以前には、「公害対策は企業の生産性を圧迫するものであり、メダカやホタルが税金を納めるわけではない」「自身の思想的な根幹は皇国史観にある」「女性は本能に属する存在である」といった趣旨の発言を行い、たびたび激しい賛否両論を引き起こしました。こうした発言は、彼の政治姿勢や価値観を明確に示しており、評価が分かれる一因となりました。

1991年に3期12年務めた大阪府知事を引退しました。翌1992年には勲一等瑞宝章を受章しています。

晩年は、2011年1月21日、慢性心不全のため大阪府茨木市内の病院で死去しました。享年88。彼の死去に伴い、日本政府は死去した同日付で従三位を追叙しました。

彼は地方自治に関する著作を複数出版しており、その思想や経験を後世に残しています。

栄典

従三位（没後追叙）
韓国修交勲章崇礼章

著書

『地方自治の探究』学陽書房、1961年
『住民自治の座標-続地方自治の探求』帝国地方行政学会、1972年
『一以貫之』堺日日新聞社、1973年
『暁闇をひらく : 地方自治と民主主義』一八会、1976年
『みんなで考えよう地方自治』（田中二郎と共著）ぎょうせい、1977年
『命なりけり』毎日新聞社、1978年
『「大阪の時代」をつくる : 装いはみどり心は平和』ぎょうせい、1986年
『終末から考える PART1 神の国とサタンの国』共栄書房、1987年
『攝理 私の履歴書』近代文藝社、1999年

関連項目

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