岸本実

岸本 実の生涯と業績

岸本実（きしもと みのる、1908年8月25日 - 1992年2月17日）は、人口地理学を専門とし、日本の地理学の発展に寄与した著名な地理学者です。徳島大学や立正大学で教鞭をとり、立正大学では名誉教授としての栄誉も認められるなど、その教育者としてのキャリアを積み重ねました。さらに、日本地理学会の会長を務めるなど、学界においても重要な役割を果たしました。

生い立ちと教育

岸本は、徳島県徳島市沖浜町大木で生まれ育ちました。彼は徳島師範学校に通い、後に東京高等師範学校に進学しました。在学中に地理学に深く魅了され、1939年には東京文理科大学の地理学専攻を卒業しました。その後、千葉県師範学校で勤務していた際、第二次世界大戦に従軍し、陸軍中尉として中国大陸での任務に従事しました。

1943年には千葉師範学校の教授職に就き、戦後は実家の要望に応じて故郷の徳島に戻りました。徳島師範学校に教授として就任し、その後、学制の改革を経て、徳島大学教育学部の教授に就任しました。彼の在職中には、徳島県の文化財保護委員なども務め、地域の郷土研究にも尽力しました。

学問的な業績

1959年、岸本は「阿波における農民離村の地理学的研究」で東京教育大学から理学博士の学位を取得しました。1963年には立正大学に転職し、文学部教授としての地位を確立します。彼は1967年から1969年にかけて文学部長も歴任し、1979年には退職して名誉教授となりました。

また、1980年から1982年にわたって日本地理学会の会長を務め、特に1980年に日本で開かれた国際地理学会議への貢献が評価されました。1982年にはその功績により勲三等瑞宝章を受章しました。

人物像

岸本の人物像については、同時代の研究者である服部銈二郎が彼を「エネルギッシュで堂々たる体躯」というように表現しています。彼は特に社交的で、学生に対して熱意を持って指導する姿勢が際立っていました。また、教室での授業はいつも情熱にあふれ、ジョークを交えながら学生たちに語りかけたと言います。彼は豪胆な性格と豊かな包容力を兼ね備え、多くの人々に慕われていました。

主な著書

岸本は数多くの著作を残しています。その中には、地域の歴史や地理に関する作品があり、特に以下の著書が有名です：

• - 『徳島県新誌』（郷土新書 36、1951年、後に改訂版が出版）
• - 『徳島の歴史』（郷土史物語 39、1962年）
• - 『人口地理学』（1968年、後に「新訂人口地理学」が1980年に出版）
• - 『日本の人口集積』（1968年）
• - 『人口移動論』（1978年）
• - 『日本の人口特性』（1981年）

これらの著作を通じて、岸本は日本の地理学、特に人口に関する知識の普及に尽力しました。

岸本実は、その学問的業績や教育現場での影響を通じて、後の世代に多大な足跡を残しました。彼の研究と情熱は、今もなお多くの人々に受け継がれています。

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