岸本英夫

岸本英夫：宗教学者、思想家、そして教育者

岸本英夫（1903年6月27日 - 1964年1月25日）は、20世紀の日本を代表する宗教学者の一人です。東京大学教授、東京大学附属図書館長などを歴任し、日本の宗教学研究に大きな足跡を残しました。

生涯と学問

兵庫県明石市に生まれた岸本は、宗教学者の父、岸本能武太の影響を受け、早くから学問の道を志しました。東京高等師範学校附属中学校では、後に東京都知事となる美濃部亮吉らと机を並べ、東京帝国大学（現東京大学）に進学。宗教学科で学び、卒業後は大学院に進み、宗教学の研究に没頭しました。

1930年からはハーバード大学大学院に留学し、宗教学の研究を深めました。1934年に帰国後、東京帝国大学講師、助教授を経て、戦後、教授に就任。また、連合国軍最高司令官総司令部の民間情報教育局 (CIE) の宗教行政顧問として、日本の宗教文化に関する言論活動を行いました。

岸本の研究は、宗教現象の多様な側面に及びました。特に、ヨーガ・スートラの宗教学的研究である『宗教神秘主義の研究』は、彼の代表的な業績の一つとして知られています。また、國學院大學日本文化研究所の創設にも参加し、日本の文化研究にも貢献しました。

図書館改革への情熱

1960年、岸本は東京大学附属図書館長に就任しました。当時、大学図書館は必ずしも十分に機能しているとは言えない状況でしたが、岸本は病をおして図書館改革に尽力しました。彼のリーダーシップのもと、図書館の蔵書管理、利用者の利便性向上、図書館員の専門性向上など、多岐にわたる改革が行われました。その成果は、東京大学のみならず、多くの大学図書館の近代化に影響を与えました。

闘病と死

1954年、岸本はスタンフォード大学客員教授としてアメリカに滞在中、頭部に悪性腫瘍が発見されました。以後、10年に及ぶ闘病生活を送り、数度にわたりガンの摘出手術を受けました。病と闘いながらも、研究活動や図書館改革への情熱を失うことはありませんでした。

1963年には脳に転移し、死の床につきましたが、定年退官直前の1964年1月25日、東京大学医学部附属病院で脳腫瘍により死去しました。その功績を称えられ、没後、従三位および勲二等瑞宝章が贈られました。また、同年、『死を見つめる心』で第18回毎日出版文化賞を受賞。1976年には、『岸本英夫集』全6巻で第30回毎日出版文化賞特別賞を受賞しました。

サッカーへの情熱

岸本は学問だけでなく、スポーツにも情熱を注ぎました。東京高等師範学校附属中学校在学時よりサッカーを始め、第六高等学校、東京帝国大学でもサッカー部に所属し、活躍しました。ポジションはフォワードで、兄弟でチームを牽引したと記録されています。

著書

岸本は、数多くの著書や論文を発表しました。主な著書としては、『宗教現象の諸相』（1949年）、『宗教神秘主義 ヨーガの思想と心理』（1958年）、『宗教学』（1961年）、『死を見つめる心 ガンとたたかった十年間』（1964年）などがあります。これらの著書は、宗教学の研究に大きな影響を与えました。

岸本英夫の遺産

岸本英夫は、宗教学者として、教育者として、そして図書館改革者として、多岐にわたる分野で貢献しました。彼の学問に対する真摯な姿勢、教育に対する情熱、そして社会に対する貢献は、 आजも多くの人々に感銘を与え続けています。岸本の残した知的遺産は、今後も日本の学術研究、教育、文化の発展に貢献していくことでしょう。

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