岸本調和

岸本調和（きしもと ちょうわ）は、寛永15年（1638年）に生まれ、正徳5年10月17日（1715年11月12日）に没した江戸時代前期の俳人です。士斎（しさい）、壺瓢軒（こひょうけん）などの別号を持ち、名は友正（ともまさ）、通称は猪右衛門（いのえもん）と称しました。

陸奥国岩代（現在の福島県）に生まれた岸本調和は、幼少の頃より荻田安静（おぎたあんせい）に師事し、俳諧の道に入りました。30歳頃に江戸へ出て、芝、日本橋、浅草といった様々な場所に居を構え、後に石田未得（いしだ みとく）の門人となります。また、当時磐城平藩の藩主であった内藤義概（ないとう よしむね）（風虎（ふうこ））とも親交を深め、内藤が開いた文学サロンの一員としても活動しました。

俳人として大名や旗本を中心に多くの門人を育て、その才能を発揮しました。しかし、松尾芭蕉（まつお ばしょう）の俳諧の作風が隆盛を迎えるにつれて、岸本調和の作風は次第に衰退していきました。晩年は、加点俳諧（かてんはいかい）に専心し、前句付点者（まえくつけてんじゃ）へと転向しました。同時期に活躍した立羽不角（りゅうは ふかく）らと共に、宝永・正徳期における代表的な俳人として知られています。

主な著作として、以下が挙げられます。

『富士石』（ふじいし）：延宝7年（1679年）に刊行された俳諧撰集。
『洗朱』（せんしゅ）
『相槌』（あいづち）
『金剛砂』（こんごうしゃ）
『題林一句』（だいりんいっく）
『ひとつ星』（ひとつぼし）
『風月の童』（ふうげつのわらわ）
『十の指』（じゅうのゆび）

岸本調和は、その生涯を通じて俳諧の発展に貢献し、江戸時代の俳諧史に名を残す人物として評価されています。

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