岸辺露伴は叫ばない 短編小説集

『岸辺露伴は叫ばない/戯れない』短編小説集

荒木飛呂彦による短編漫画シリーズ『岸辺露伴は動かない』を原作とした、短編小説集シリーズです。
『岸辺露伴は叫ばない 短編小説集』と、その続編である『岸辺露伴は戯れない 短編小説集』の2冊が刊行されています。これらの小説は、漫画版の独特な世界観を尊重しつつ、小説ならではの表現で物語を深掘りしている点が特徴です。

概要

原作漫画『岸辺露伴は動かない』は、漫画家・岸辺露伴を主人公とした短編シリーズです。小説版は、この漫画版のノベライズ作品として、集英社の漫画雑誌『ウルトラジャンプ』の付録小冊子に掲載されたものが初出となります。

『岸辺露伴は叫ばない』には、以下の5作品が収録されています。

くしゃがら
Blackstar.
血栞塗
検閲方程式
オカミサマ

『岸辺露伴は戯れない』には、以下の4作品が収録されています。

幸福の箱
夕柳台
シンメトリー・ルーム
楽園の落穂

これらの作品は、いずれも原作の持つ不気味さや奇妙さを継承しつつ、小説としての読み応えも十分です。

特殊な発行形態

初出となった付録小冊子は、「集英社UJ文庫」という独自のレーベルで製本されており、通常の文庫本のようにカバーや奥付がついています。ただし、このレーベルは通常の「集英社文庫」や「集英社コミック文庫」とは異なり、非売品であり、『ウルトラジャンプ』本誌との分売も不可という特殊な扱いとなっています。また、デジタル版では読むことができません。

作品リスト

『岸辺露伴は叫ばない』収録作品

くしゃがら

『ウルトラジャンプ』2017年8月号に掲載された、北國ばらっどによる作品です。

あらすじ:
漫画家の岸辺露伴は、カフェで別の漫画家である志士十五と出会います。十五は、新しい担当編集者から渡された禁止用語リストの中に、「くしゃがら」という言葉があることに困惑していました。その意味を調べても全くわからず、露伴にも協力を求めます。露伴も好奇心から調査を始めますが、次第に「くしゃがら」の持つ不可解な力に巻き込まれていきます。

登場人物:

岸辺露伴: 人気漫画家。「くしゃがら」の謎を追う。
志士十五: 漫画家。謎の言葉「くしゃがら」に執着する。

用語:

くしゃがら: 意味不明の禁止用語。この言葉に興味を持った者は、その謎を解こうとするあまりに取り憑かれていきます。

Blackstar.

『ウルトラジャンプ』2017年8月号に掲載された、吉上亮による作品です。

あらすじ:
露伴は、エージェント・ガブリエルという男から、「スパゲッティ・マン」という男の肖像画を描いてほしいと依頼されます。露伴は過去にスパゲッティ・マンと遭遇した経験があり、その正体に興味を持ちます。露伴は過去の体験を語り始め、スパゲッティ・マンの恐ろしい力と、彼が引き起こす怪奇現象が明らかになっていきます。

登場人物:

岸辺露伴: 人気漫画家。スパゲッティ・マンの肖像画を描く依頼を受ける。
エージェント・ガブリエル: スピードワゴン財団の代理人。露伴にスパゲッティ・マンの情報を求める。
スパゲッティ・マン: 都市伝説として語られる謎の男。遭遇した者は行方不明になる。

血栞塗

『ウルトラジャンプ』2018年1月号に掲載された、宮本深礼による作品です。

あらすじ:
フグ毒について調べていた露伴は、図書館で「真っ赤な栞」の噂を聞きます。それは、見つけると不幸になるという栞でした。好奇心から露伴は栞を探し始め、その栞がもたらす不可解な現象に巻き込まれていきます。

登場人物:

岸辺露伴: 人気漫画家。「真っ赤な栞」の謎を追う。
司書の女性: 図書館の司書。「真っ赤な栞」の秘密を知る。

用語:

真っ赤な栞: 見つけると不幸になるという噂の栞。この栞には、人の好奇心を刺激する危険な力が宿っています。
河豚食の誘い: 明治中期に書かれたフグ料理に関する書籍。稀覯本。

検閲方程式

『ウルトラジャンプ』2017年9月号に掲載された、維羽裕介による作品です。

あらすじ:
露伴は、未知との遭遇をテーマにした短編の執筆を依頼され、大学図書館で資料を探します。そこで、大学院生の近森優斗と出会い、彼が恋人のために解いていた「別次元に干渉するための数式」の存在を知ります。露伴はその数式に興味を持ち、真相を追ううちに、数式の恐ろしい力に直面します。

登場人物:

岸辺露伴: 人気漫画家。数式の謎を解き明かそうとする。
近森優斗: 大学院生。恋人のために数式を解こうとする。
近森の恋人: 別次元に干渉するための数式を解いたことで意識不明となる。

用語:

別次元に干渉するための数式: 解くことで別次元に干渉できるとされる数式。この数式には、解いた者に恐ろしい現象を引き起こす力が宿っています。

オカミサマ

北國ばらっどによる書き下ろし作品です。

あらすじ:
税理士の坂ノ上誠子から金の使いすぎを注意された露伴は、彼女の事務所で「オカミサマ」と書かれた領収書を発見します。それは、支払いを帳消しにするという不思議な効果を持つ領収書でした。露伴は興味本位で試しますが、それが引き起こす恐ろしい出来事に翻弄されることになります。

登場人物:

岸辺露伴: 人気漫画家。「オカミサマ」の力に翻弄される。
坂ノ上誠子: 露伴の税理士。「オカミサマ」について知っている。

用語:

オカミサマ: 領収書の宛名にすると支払いを帳消しにするが、代わりに恐ろしい取り立てに遭うとされる存在。

『岸辺露伴は戯れない』収録作品

幸福の箱

『ウルトラジャンプ』2017年8月号に掲載された、北國ばらっどによる作品です。

あらすじ:
古物商の五山一京から「幸福の箱」を見せられた露伴は、その箱を組み立てるように促されます。それは、特別な才能を持つ者だけが組み立てられるパズルでした。好奇心から露伴は箱を組み立て始めますが、その裏には五山の恐ろしい企みが隠されていたのです。

登場人物:

岸辺露伴: 人気漫画家。「幸福の箱」を組み立てる。
五山一京: 古物商。露伴を箱の完成に利用しようとする。
五山千波: 一京の妻。箱の秘密を知り、夫を閉じ込めようとする。

用語:

幸福の箱: 組み立てると幸せな夢を見られるが、中に閉じ込められてしまうという箱。

夕柳台

『ウルトラジャンプ』2017年9月号に掲載された、宮本深礼による作品です。

あらすじ:
公園で子供のスケッチをしていた露伴は、夕柳台という住宅地で起こった怪事件の話を聞きます。興味を持った露伴は夕柳台を訪れますが、そこで「黒く干涸びた老人」と呼ばれる怪異に遭遇します。露伴は、事件の真相と怪異の正体を突き止めようとします。

登場人物:

岸辺露伴: 人気漫画家。「黒く干涸びた老人」の謎を追う。
ケンちゃん: 夕柳台で怪異を目撃した少年。
夕柳台の老人達: 夕柳台に住む老人達。怪異と関係がある。
黒く干涸びた老人: 夕柳台に出現する怪異。

用語:

夕柳台: 静かで閑静な住宅地。しかし、奇妙な事件が起こっている。

シンメトリー・ルーム

『ウルトラジャンプ』2018年1月号に掲載された、北國ばらっどによる作品です。

あらすじ:
大学で学長が奇妙な死を遂げた事件を追う露伴は、新校舎を設計した建築家、土山章平と出会います。土山はシンメトリーを絶対的な美と信じており、シンメトリーを理解しない露伴を、自らの最高傑作である「シンメトリー・ルーム」に閉じ込めます。露伴は、その部屋の恐ろしい力に巻き込まれていくことになります。

登場人物:

岸辺露伴: 人気漫画家。「シンメトリー・ルーム」の謎を追う。
土山章平: 建築家。シンメトリーに異常な執着を持つ。

用語:

シンメトリー・ルーム: 全てがシンメトリーにデザインされた部屋。シンメトリーを崩すと恐ろしいことが起きる。
シンメトリーの手: シンメトリー・ルームを守る存在。シンメトリーを崩す者を攻撃する。

楽園の落穂

吉上亮による書き下ろし作品です。

あらすじ:
グルメ漫画の執筆を依頼された露伴は、伝説の小麦「楽園の落穂」の取材のために、編集者の移季年野とその娘と共に、栽培地を訪れます。その小麦には、食べた者の体質を劇的に変える力があるという。露伴は「楽園の落穂」の持つ不思議な力に興味を持ちますが、そこには恐ろしい罠が仕掛けられていたのです。

登場人物:

岸辺露伴: 人気漫画家。「楽園の落穂」の謎を追う。
移季年野: 雑誌編集者。「楽園の落穂」の取材を取り付ける。
移季羊: 年野の娘。小麦アレルギーを持つ。
屋宜沼猩造: 移季の友人。「楽園の落穂」を栽培している。

用語:

楽園の落穂: 食べた者を支配し、家畜化する力を持つという伝説の小麦。

書籍情報

『岸辺露伴は叫ばない 短編小説集』 ISBN 978-4-087-03455-4 2018年6月19日発売（ジャンプ ジェイ ブックス）
『岸辺露伴は戯れない 短編小説集』 ISBN 978-4-08-703457-8 2018年7月19日発売（ジャンプ ジェイ ブックス）

脚注

各作品の初出は、『ウルトラジャンプ』の付録小冊子「岸辺露伴は動かない短編小説集(1)」「(2)」「(3)」。

関連項目

バイオーグ・トリニティ - 同様にウルトラジャンプの付録として「集英社UJ文庫」小説版掌篇集がある。

外部リンク

JUMP j BOOKS 『岸辺露伴は叫ばない 短編小説集』 - 『くしゃがら』の冒頭部分が試読可能。
JUMP j BOOKS 『岸辺露伴は戯れない 短編小説集』 - 『夕柳台』の冒頭部分が試読可能。

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