島津忠卿

島津忠卿（しまづ たださと）

島津忠卿は、江戸時代中期に生きた人物で、今和泉島津家の初代当主です。薩摩藩の第4代藩主であった島津吉貴の七男として、1742年（寛保2年）に誕生しました。当時、父である吉貴は既に藩主の座を退き、隠居生活を送っていました。

1744年（延享元年）、忠卿は兄で第5代藩主の島津継豊の命により、島津一門である和泉家の名跡を継承し、今和泉家を創設しました。この際、忠卿は十文字紋と桐紋の使用を許され、揖宿郡の内小牧村、岩本村、西方村、そして頴娃郷の内池田村、仙田村、利永などの地を知行地として与えられました。

和泉家は、島津家第4代当主・忠宗の次男である忠氏を祖とする家系でしたが、1417年（応永24年）の川辺城の戦いで第5代当主の直久が戦死して以来、長くその家系は途絶えていました。忠卿の今和泉家創設は、この歴史ある家名を再興するものでした。

忠卿は1754年（宝暦4年）11月13日に、わずか13歳という若さでこの世を去りました。彼の死後、家督は実弟の安之助（後の忠温）が、養子入りしていた小松家との養子縁組を解消して相続しました。

特筆すべきは、忠卿が創設した今和泉家が、後に13代将軍徳川家定の正室である天璋院を輩出する家系となることです。若くして亡くなった忠卿でしたが、彼が築いた今和泉家は、歴史に名を残す人物を輩出し、その存在感を後世に示しました。

参考文献
指宿市誌
林匡『島津氏の縁組 重豪、斉宣、斉興を中心に』

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