今和泉島津家

今和泉島津家

今和泉島津家は、島津氏の支流にあたる武家、士族、そして華族の家系です。その起源は、江戸時代に遡ります。室町時代に応永の戦乱で断絶した和泉氏の名跡を、薩摩藩主島津吉貴の七男である忠卿が継承し、今和泉郷を領したことから、今和泉島津家が成立しました。この再興により、今和泉島津家は薩摩藩の一門家としての地位を確立し、維新後には男爵の爵位を授けられることとなります。

歴史

江戸時代

1744年（延享元年）、薩摩藩4代藩主・島津吉貴の七男である忠卿が、室町時代の戦乱で断絶した和泉氏の名跡を継ぎ、今和泉郷を領有しました。これにより、今和泉島津家が正式に成立し、薩摩藩の重要な一門家としての役割を担うことになります。家禄は1万5000石とされ、藩内でも大きな影響力を持っていました。

また、今和泉島津家からは、13代将軍徳川家定の御台所となった天璋院（島津忠剛の長女）を輩出しており、幕府との関係も深い家柄でした。

幕末維新期

幕末維新期の当主は島津忠敬でした。明治維新後、当初は士族に列せられましたが、その後の華族制度の導入により、その地位に変動が生じます。

1884年（明治17年）に華族制度が五爵制となった際、当初の計画では旧万石以上の陪臣も男爵の対象とされていましたが、最終的には対象外となり、今和泉島津家は一旦士族のままとなりました。しかし、1882年（明治15年）から1883年（明治16年）ごろに作成されたとされる『三条家文書』所収の記録によると、島津忠敬は旧禄高1万5400石を有し、田畑や貸付金などから相当な収入を得ていたことがわかります。この記録から、当時の今和泉島津家が財産的に安定していたことが伺えます。

その後、忠敬の跡を継いだ忠欽が、玉里島津家の島津忠済公爵の戸籍に復籍したため、忠欽の次男である隼彦が家督を相続しました。1900年（明治33年）5月9日、旧万石以上の陪臣家であり、かつ華族としての体面を維持できる財産を有する25家が男爵に叙せられ、隼彦もその一人として男爵の位を授けられました。

隼彦の息子である忠親の代には、今和泉島津男爵家の住居は鹿児島県鹿児島市郡元町にありました。

歴代当主

1. 島津忠郷
父：島津吉貴（島津本宗家）
子：島津忠温（2代、養子、島津本宗家吉貴の子）
2. 島津忠温
父：島津忠郷（養父）、島津吉貴（実父、島津本宗家）
子：島津忠厚（3代、養子、島津本宗家重豪の子）
3. 島津忠厚
父：島津忠温（養父）、島津重豪（実父、島津本宗家）
子：島津久徳（加治木島津家）、島津忠喬（4代）、島津久名（島津蔵人家祖）、大野久甫（大野氏本家）
4. 島津忠喬
父：島津忠厚
子：島津忠剛（5代、養子、島津本宗家斉宣の子）
5. 島津忠剛
父：島津忠喬（養父）、島津斉宣（実父、島津本宗家）
子：島津忠冬（6代）、島津久敬（永吉島津家）、島津忠敬（7代）
6. 島津忠冬
父：島津忠剛
7. 島津忠敬
父：島津忠剛
子：島津忠欽（8代、養子、重富島津家忠教の子）
8. 島津忠欽
父：島津忠敬（養父）、島津忠教（実父、重富島津家）

脚注

今和泉島津家は、薩摩藩の歴史において重要な役割を果たし、幕末から明治にかけての激動期を生き抜いた一族です。

参考文献

華族大鑑刊行会『華族大鑑』日本図書センター〈日本人物誌叢書7〉、1990年
松田敬之『〈華族爵位〉請願人名辞典』吉川弘文館、2015年
森岡浩『日本名門・名家大辞典』東京堂出版、2012年

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