島田一郎

島田 一郎（しまだ いちろう）

島田一郎は、1848年に現在の石川県金沢市で誕生した加賀藩士で、陸軍軍人としても名を馳せました。彼は、青年時代に日本が大きく変わる中で成長し、特に長州征伐や北越戦争など多くの戦闘で戦歴を重ねました。初陣を飾った長州征伐では若さを活かし、勇敢な姿勢でのぞみ、1868年の北越戦争では、その功績から御歩並に昇進します。

藩の解体後、島田は陸軍への道を選び、フランス式の兵学を学んで中尉まで昇格します。しかし、後に故郷に戻り、不平士族の一派である三光寺派の指導者として活動し、萩の乱や西南戦争に参加しました。これらの戦乱の後、彼は新しい戦略を打ち立て、要人の暗殺という道を選びました。

当時の日本は新たな時代に突入し、明治政府に対する反発も存在していました。島田はこの流れの中で、1878年5月14日に大久保利通を暗殺する計画を実行に移します。この事件は「紀尾井坂の変」として知られていますが、実際には暗殺現場は紀尾井坂ではなく、東京の清水谷付近でした。事件の後、島田は自首し、同年7月27日には市ヶ谷監獄で斬首される運命を迎えます。

事件の背景には、彼のあだ名「西洋犬」や、台湾の役や征韓論を推進する役割がありました。私生活では、長男に家督を譲った後、隠居生活を送りながらも、幕末の政治状況に翻弄されることになりました。大久保暗殺の当日、彼はシンプルな羽織姿で現れ、懐中には短銃を所持していたものの、それを発砲することはありませんでした。

彼が斬首される瞬間、仲間たちに向けて「愛国の諸君、御先に御免」と叫び、その後の問いには「ここに及んで申し残すことはない」と述べたと言われています。また、島田の辞世の歌も複数残されており、明治18年の新聞には「かねてより　今日のある日を知りながら　今は別れとなるぞ悲しき」という歌が紹介されています。

島田一郎の墓所は、東京の谷中霊園にあり、彼と共に暗殺に関与した6名の墓石が並んでいます。日本の近代史において、彼の行動は大きな影響を与え、多くの作品や文献にも取り上げられています。明治初期の動乱の中で、彼の生涯は一つの伝説として語り継がれています。

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