崎山貝塚

崎山貝塚：縄文時代の環状集落跡

崎山貝塚は、岩手県宮古市に位置する縄文時代の貝塚および環状集落の遺跡です。1996年に国の史跡として指定され、その歴史的価値が認められています。遺跡は、宮古湾の北部、海岸からやや内陸に入った丘陵地帯に位置し、縄文時代の生活を知る上で重要な手がかりを提供しています。

遺跡の概要

宮古湾西岸に位置する崎山貝塚は、縄文時代の前期から晩期にかけて人々が生活を営んだ拠点的な集落の一つです。この地域の貝塚の特徴として、岩礁性の貝が主であるため、貝殻の量はそれほど多くなく、代わりに人工遺物や獣・魚の骨などが目立ちます。

明治時代から、岸上鎌吉や柴田常恵といった研究者によって発掘調査が行われ、地元研究者による熱心な研究や、長谷部言人による人骨収集も実施されました。これらの調査によって、崎山貝塚は古くから注目される遺跡となりました。

遺跡の構造

崎山貝塚は、縄文時代の前期から中期にかけて形成された貝塚と、中期後半に営まれた集落跡から構成されています。貝塚は南東と北西の斜面に位置し、獣骨や魚骨、貝殻など、当時の人々の食生活や自然環境を知るための豊富な資料が含まれています。また、土器や石器、釣針、骨角器などの多様な遺物も出土しており、当時の技術や文化を知ることができます。

集落跡は、台地の頂部を削平し、盛土遺構を形成しています。中央部には、環状に帯状の凹地を掘って中央に広場を作った環状集落の跡が見られます。この環状の凹地は、外側の長さが85メートルほどで、内側の広場が長径36.7メートル、短径21メートルとなっており、その特異な構造は全国的にも珍しいものです。

環状の凹地の内部からは、配石を持つ墓穴やフラスコ状の貯蔵穴が発見されており、当時の人々の精神文化や生活様式を垣間見ることができます。また、環状の凹地の東西には、竪穴建物や掘立柱建物、土坑などが分布しており、集落の構造を理解する上で重要な情報を提供しています。

史跡公園としての活用

国の史跡指定後、崎山貝塚は「崎山貝塚縄文の森公園」として整備され、一般に公開されています。園内には展示施設「宮古市崎山貝塚縄文の森公園複合施設」が併設されており、遺跡から出土した遺物や、縄文時代の生活に関する展示を見ることができます。この複合施設は、ミュージアム、宮古市埋蔵文化財センター、崎山公民館、崎山出張所から構成され、地域の文化振興にも貢献しています。

複合施設の建築は、アトリエノルドが手掛け、2018年には東北建築賞作品賞を受賞しています。展示物や展示内容と建築空間との融合が高く評価され、縄文時代の歴史と文化を体感できる空間となっています。

崎山貝塚は、縄文時代の環状集落の構造や、当時の人々の生活、文化、自然環境を知る上で貴重な遺跡です。史跡公園として整備され、展示施設も充実しているため、訪れる人々に縄文時代の魅力を伝えています。

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